厳しい競争を勝ち抜いた武器は「ダブルレンズ機構」
だが今年は、他のSIMフリースマートフォンメーカーも日本市場に向けて多くの特徴ある新製品を投入しており、競争が非常に激しくなっている。そうした中にあって、なぜファーウェイは躍進を遂げることができたのだろうか。
最大の要因は、やはりヒットモデルとなった端末自体の魅力にあるといえよう。特にP9は、アップルの「iPhone 7 Plus」に先駆けていち早くダブルレンズ機構を採用。スペック競争が続いていたカメラ機能に新たな提案を持ち込み、撮影する楽しさをもたらした点を評価する声が多く聞かれた。
そしてもう1つ、忘れてはならないのは、楽天モバイルから独占販売されている「honor 8」だ。こちらはオンライン販売限定のモデルながら、P9に近い性能を備え、なおかつライカレンズではないもののダブルレンズ機構もしっかり採用。それでいて、楽天モバイルのSIMとのセット販売により、35,800円で購入できるなどコストパフォーマンスが非常に高いことから、発売以降高い人気を獲得している。
差異化が難しくなりつつあるスマートフォンの中にあって、十分な基本性能を備えながらも、ダブルレンズ機構というインパクトのある機能を備え、それでいてお得感のある価格設定がなされていた。そうしたトータルバランスの良さが、これらの端末の人気に火を点けたといえるだろう。昨年P8liteがヒットがあったことから、P9 liteがヒットすることはある程度予想できたものの、P9がここまでヒットしたことは、ファーウェイ関係者の間でも予想外だったとのことだ。
そしてこれらモデルの人気には、口コミも大きく貢献したと見られる。特に日本ではここ1、2年のうちに、Instagramなど写真を重視したSNSの人気が急速に高まっている。そうしたサービスを通じてカメラ機能が高く評価されたことが、ユーザー同士の口コミ効果を呼び、さらにユーザーを増やす好循環を生み出したようだ。
ただし、ファーウェイが今年躍進を遂げたのは、端末の魅力だけが要因ではないことは覚えておく必要がある。同社は今年、国内でのサポート強化にも乗り出しており、4月に東京・銀座にカスタマーサービスセンターをオープンしているのだ。
SIMフリースマートフォンは、大手キャリアと比べ自社でサポートする必要があるため、サポート面での弱さが以前より指摘されていた。だがファーウェイは、電話などでのサポートだけでなく、あえて専用のサポートセンターを設け、直接ユーザーが訪れる形でのサポートも実現している。サポート体制の有無は購入後の安心感に大きくつながってくるだけに、サポートに注力する姿勢が、ファーウェイの評価を高めたことは確かだろう。