調印式にのぞむ鈴木市長と須永氏。背後には夕張のゆるキャラのアイツが……全然ゆるくない

鈴木市長とトラストバンクの出会いは、なかなかユニークだ。トラストバンクの須永氏は、ある日、テレビで夕張市が財政再建に奮闘する番組を観たそうだ。

「夕張市の番組を観て、トラストバンクでも何かお手伝いできないものかと思いました」(須永氏)。

そんな折、鈴木市長から須永氏に「ぜひ、お目にかかりたい」という連絡が入った。番組で観た夕張市が気になっていた須永氏は、その連絡を受けた際、運命的な何かを感じたという。

そして9月28日、鈴木市長はトラストバンクを訪れ、須永氏と会談した。「通常、自治体の首長が弊社にいらっしゃる際、2~3人の方と来社されるのが普通ですが、鈴木市長は、たったお一人で来社されました」と明かす。東京までの渡航費を少しでも節約したい鈴木市長の心情が伝わってくるようなエピソードだ。

お礼の品を増やして市への寄付を募る

そして、トラストバンクは10月に夕張市に早速向かい、ふるさと納税について何か支援できないか視察。何しろ全国各地、10万点以上もの納税者へのお礼の品を紹介しているサイト、ふるさとチョイスを運営する同社だ。夕張市のお礼の品を提供する事業者を、それまでの夕張市農協のみから8事業者へと広げることができた。

これまで夕張メロンだけだったお礼を50種に増やす

鈴木市長によると、ふるさと納税開始初期には、現在お礼としている夕張メロンはおろか、手紙すら出していなかったそうだ。納税者から「手紙ぐらいは……」と指摘され、お礼の手紙、そして夕張メロンを届けるようになった。ただ、これからは8事業者の協力で、よりバリエーションに富んだお礼を届けられるようになる。

さて、破綻したとはいえ、夕張市には大きな財産がある。それは夕張高校だ。以前、別の取材でお会いした自治体の首長が、「高校がないので子育て世代が居着かない」とこぼしていた。

それを思い出した筆者は鈴木市長にそのことを問うと、「確かに高校があるのは財産です。ですが、手をこまねいていては、それすら無くなります」と危機感をみせた。鈴木市長によると、集まった寄付で夕張高校の“高校魅力化”を推進するそうだ。

なお、あとから知ったことだが、須永氏が観た番組はこの夕張高校の危機を報じたものだった。ぜひとも高校魅力化を推し進め、夕張市の再生のためにがんばっていただきたい。