発表会では、エプソン販売の佐伯社長が「技術発表からちょうど1年で正式発表にたどり着けた」と振り返り、エプソンが提供する「省・小・精の価値」、その背後にある「スマート、環境、パフォーマンス」というキーワードに合致するのがPaperLab A-8000と語った。

また、紙の重要情報をオフィス内で完全に抹消再利用できるスマートさ、小さなサイクルの循環型で環境に優しいこと、紙を1つの装置で再生可能なパフォーマンスをアピール。今後の製品開発にもつなげたいと意欲を見せた。

エプソン販売 代表取締役社長 佐伯直幸氏

エプソンの「省・小・精の価値」を具現化したのが今回のPaperLab A-8000

セキュリティの向上、循環型社会と多種な紙の生産が機器レベルで提供する

インクジェットプリンタでオフィス文章を作成し、それをPaperLabで再利用する循環型オフィスを提案

消耗品代は紙代よりも若干安く、3年後に100億を目指す

PaperLab A-8000の概要に関しては、今回のプロジェクトを担当したセイコーエプソンの市川氏部長が説明。PaperLab A-8000の提供価値として「セキュリティ向上、多彩な紙の高速生産、環境負荷の低減」の3つを挙げた。先述したが、特に環境負荷に関しては、オフィス用紙1枚の再生にコップ1杯程度の水資源が必要となるが、PaperLab A-8000では不要。再生紙設備として小型の本体は設置しやすく、オフィス内でリサイクルが完結するため、輸送負荷も減る。

技術面のキモである「ドライファイバーテクノロジー」に関しては、2011年から技術開発を進めていた。紙をファイバー状にする技術は、すでにエプソン製のインクジェットプリンタが備える「廃インク受け」で活用済み。「ファイバー」の結合はプリンタの材料技術、成形もプリンタのメディア技術がベースとなっているという。

セイコーエプソン ペーパーラボ事業推進プロジェクト部長 市川和弘氏

シュレッダーは紙を細かく「切る」が、PaperLab A-8000は紙を粉砕してファイバー状に。紙情報の完全抹消を実現できる

単なるオフィス用紙の再生にとどまらず、多種多様な用紙の再生が可能

ほとんど水のいらない機構に加えて、紙の再生によって資源と輸送コストを低減

販売や価格に関しては、エプソン販売の鈴村氏が説明。本体やオプションの価格はオープンプライスだが、冒頭で述べたように本体価格は2,000万円前半だ(消耗品は以下の画像を参照)。2017年1月の出荷はまずプレミアムパートナーからスタートし、それ以外の顧客へは2017年秋から提供する予定。また、大型機器(1.7トン)ということもあって受注生産となり、発注から設置までのリードタイムは3カ月程度とのことだ。

ランニングコストの目安は、実際の紙を買うよりも若干安い程度。これは消耗品のみの価格で、本体費用、メンテナンスコスト、電気代は含まれていない。ただし、PaperLab A-8000は、費用よりもセキュリティを重視したい、環境配慮をアピールしたいという企業や団体が興味を引く製品だろう。

エプソン販売 取締役 販売推進本部長 鈴村文徳氏

本体・オプションともにオープンプライス。メンテナンス費用が加わるので、ザックリと7年で「3,000万円+消耗品代+電気代」が必要となる。当面は、ある程度の大企業、団体、自治体への導入を想定している

消耗品の価格。価格メリットと環境配慮のアピールを考えると、名刺用のプレーン厚紙(マンスリーパック)が望まれそうだ

1枚当たりの消耗品ランニングコスト。実際にはこれに電気代(と装置の償却分)が加わる

質疑応答では事業規模に関する質問があり、3年後に100億円のビジネスを計画していると回答。ビジネス規模は日本以外の地域も含めているというが、具体的な国名は挙げられなかった。

2016年12月8日~10日に行われるエコプロ2016に出展

導入利用事例に関しても、順次公開する予定

プレミアムパートナーとして長野県・塩尻市の小口市長がスピーチ

プレミアムパートナーとして、塩尻市の小口市長が登壇。現在は市役所の1FにPaperLab A-8000の試作機を導入している。小口市長は、「技術系の出身としては、乾式で紙ができるところにビックリしてカルチャーショックを受けた」そうだ。

一方、塩尻市は「機密保持、未来の地球への貢献、障害者雇用」と、これからのチャレンジという4項目を掲げている。PaperLab A-8000を用いた具体策として、「機密保持のためにPaperLab A-8000を使い、市庁舎から外に機密文書を出さない体制」を作ると述べた。

最後に伺ったところ、PaperLab A-8000の処理能力(年間8トン)では足らないということで、2カ所に設置してすべての機密文書を外部に出さずPaperLab A-8000で処理することを考えているという。

ゲストとして登壇した長野県・塩尻市の小口利幸市長

PaperLab A-8000を使った名刺も解禁ということで、塩尻ワインをアピールするブドウロゴを使った名刺を頂戴した

塩尻市は、環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」を保育園や小中学校まで取得。PaperLab A-8000も小学校の社会科見学に活用するなど、環境教育を行っている