篠塚医師は旅行医学にも精通しているが、旅行時に利用する飛行機や船といった移動手段は人が多いうえに空間が限定されているため、感染性胃腸炎患者が爆発的に増加しやすいと警鐘を鳴らす。

例えば、飛行機内でノロウイルスが原因で吐いた人がいたとしよう。その周辺にいた人の手には、目に見えないサイズの飛沫が飛び散り、その手で機内食のパンを食べれば当然、体内にウイルスが入り込んでしまう。

「ノロウイルスはクルーズ船で集団発生すると昔から有名です。食材や調理する人、給仕する人がウイルスを保有しているなどし、船内で大量発生します。クルーズ船内だとウイルスからの逃げ場がないですよね。さらに人が行く場所も食堂や船医室、船内のミニバーとかに限られてくるので、そういった場所で感染が広がってしまうんですね」。

実際に千駄ヶ谷インターナショナルクリニックには、同じ船に乗り合わせた複数の患者が感染性胃腸炎を主訴として訪れることが多いという。

子どもからの家庭内感染に注意

そのほかでよく見られる感染のパターンは、「集団生活の場での感染し、家庭内で二次感染させる」というもの。例えば、保育園や小学校などの場で子どもがノロウイルスに感染し、そのウイルスを家族へとうつしてしまうケースが想定される。

「保育園や小学校では子ども同士で一緒に遊ぶなど、社会人に比べて体を接触させることも多いでしょうから、ウイルスが感染しやすいと考えられます」と篠塚医師は話す。そして子から親へ、その親から大人同士が集う会社へと感染が拡大する恐れがある。

家庭内での二次感染を防ぐため、感染性胃腸炎と思(おぼ)しき症状を家族が呈していた場合は「吐しゃ物やふん便を流すトイレの掃除をきちんとする」「使用するタオルを別にする」「感染者にはお風呂に最後に入ってもらい、使用後は念入りに浴槽などを洗う」といった行動をとるようにしたい。

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 篠塚規(しのづか ただし)

千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの院長。千葉大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学医学部勤務、医療法人社団松弘会三愛病院副院長・外科部長を務めた後、日本旅行医学会を設立。2013年5月 WHOの「INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH(ITH)」の編集会議に編集委員として参加するなど、日本における旅行医学の第一人者として活躍する。