コトブキヤが展開するフィギュアシリーズ「ARTFX J」より、TVアニメ『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』(以下『遊☆戯☆王DM』)の「アテム」が、2017年3月に発売される。
アテムは3000年前の古代エジプトの王(ファラオ)であり、『遊☆戯☆王DM』の主人公である武藤遊戯の体を借りて現世に復活。二人で協力しながら強敵とのデュエルに挑んでいくというキャラクターである。なぜアテムだったのか。開発にはどんな苦労があったのか。コトブキヤで本作の企画を担当した紀平氏と原型を担当した白髭創氏に開発秘話を聞いた。
担当者の熱意から生まれた「アテム」の企画
――まずは企画のお話から伺いたいと思います。今回のアテムですが、どのようなところからフィギュア化の話がスタートしたのでしょう。
紀平 まず、この『遊☆戯☆王DM』シリーズのフィギュアを始めたときの話から……。最初に作ったのはブラック・マジシャン・ガールだったのですが、これは実は白髭のご褒美企画だったのです。
――ご褒美企画?
紀平 ずっと白髭がブラック・マジシャン・ガールを造りたいと言い続けていたのが始まりです。
――つまり、白髭氏の情熱から始まったわけですか!
白髭 実はそうなんです(笑)。
――そこから人気が出て今に至る、と。では今回のアテムは……。
紀平 私のご褒美企画ですね(笑)。実は『遊☆戯☆王DM』シリーズは前回の闇バクラで一旦完結する予定だったんです。私は『遊☆戯☆王DM』の大ファンで、最後にアテムで締めくくりたいと思っていたのですが、キャラ選定がさすがに個人的な趣味に寄りすぎているかな……と思って、あきらめていたんです。そんなとき、たまたま白髭の手が空きまして……。
白髭 ちょうどスケジュールが空いていて、暇しているわけにもいきませんから、すぐ入れられる仕事を探していたんです。
紀平 『遊☆戯☆王DM』シリーズはずっと白髭が担当していたので、まずは白髭のスケジュールが空いていることが前提であることもあり…これはいけるんじゃないかと。
――いろいろなタイミングがちょうどよく重なったのですね。
紀平 海外からも続編を熱望する声が多数届いていたんです。古代編も作ってほしい、続きはないんですかと。国内も海外も『遊☆戯☆王DM』への熱は高く、私だけでなく世界中の『遊☆戯☆王』ファンが待っているんだなと思いました。
――ともあれ、無事に企画がスタートしたわけですね。
白髭 そのタイミングで『遊☆戯☆王DM』の映画化の話も決まったんですよね。
紀平 そうなんです。
――映画化があったから企画したわけではなく?
紀平 フィギュアが先でしたね。タイミングよく映画化も決まったので、追い風になりました。
――白髭さんはアテムと聞いてどう思いましたか?
白髭 うん、ありだなと思いましたね。
フィギュアとしての見栄えを考えて、どの角度から見てもかっこいいポーズに
――ではここからはアテムの制作についてお話を聞かせてください。アテムのポーズですが、これは企画段階で決まったものですか? それとも白髭さんが?
紀平 企画段階ではポーズはなくて、私的にアテムはこのイメージかなという原作やアニメの絵を何枚か白髭に渡しました。ポーズに関してはもう、白髭に任せた方が間違いないんですよ。
白髭 それを見てポーズを選びました。ただ、そのままではなく、もっとこうしたらとか自分の考えも折り込みながら決定しました。ですから原作そのままの立ち姿というわけではないです。
紀平 でも、まさにアテムのイメージなんですよね。キャラクターのイメージをしっかり再現しながら、造形としてどうすれば見栄えがよくなるか、白髭はそのバランスを表現するのがとても上手なんです。
――フィギュアとしての見栄えというと?
白髭 たとえばアテムでいうと、右手がピンと伸びてシャキーンとしているところとか。あとはボリュームが大事ですね。マントはボリュームを出せる部分ですが、空間のとり方次第では意外とコンパクトになってしまうんです。基本的にはアテムが目を向けている方向から見たとき、マントがかっこよくはためくことを意識しています。ただ、角度を変えたときにぺたんこになってしまうとがっかりしてしまうので、そこは奥行きを持たせて、どの角度から見てもかっこいいものに仕上げました。
紀平 フィギュアはイラストと違って、いろいろな角度から眺めることができます。それがフィギュアの醍醐味でもありますが、制作側としては気を抜けない部分でもありますね。
――たしかにアニメや漫画で後ろ姿ってあまり見ない気もしますね。
白髭 アテムもそうなので、正面を基準にしつつ、横や斜めの絵を参考にして立体で再現しました。