検査で脳動脈瘤破裂が確認されたら、ただちに再破裂を防ぐために原則的には手術となる。手術方法は脳動脈瘤の部位や形、患者の体力などの要素を総合的に勘案し、「クリッピング手術」と「血管内手術(脳動脈瘤内塞栓術)」のいずれかを選択する。それぞれのメリットとデメリットも踏まえ、その特徴をまとめた。
クリッピング手術……脳動脈瘤からの再出血を防ぎ、脳のダメージをより深刻にさせないために用いる術式。開頭した後、動脈瘤の根元部分を血管の外側からクリップではさみ、脳動脈瘤内に血液が入らないようにすることで再破裂を防止する。
■メリット: 古くから用いられる手術で、医師が顕微鏡(マイクロサージェリー)で見ながら直接手術をするため、確実性に優れる。治療中に再度出血し始めた場合でも対処しやすい。
■デメリット: 開頭するため、患者への負担度が増す。また、脳の中心部などデリケートな位置に脳動脈瘤がある場合、手術が困難である。
血管内手術(脳動脈瘤内塞栓術)……足の付け根などから血管内にカテーテルを挿入し、脳動脈瘤の中に柔らかい金属製のコイルをつめることで、再びこぶ内に血がたまらないようにする術式。クリッピング手術よりも歴史は浅い。
■メリット: 開頭せずに短時間で治療できるうえ、体への負担が少ないため高齢者でも施術しやすい。脳の奥深い位置にある脳動脈瘤でも治療が可能。
■デメリット: 術中に再出血し、脳内に血腫ができた場合などの対応が難しい。クリッピングと同程度の根治性を主張する論文も最近出てきているものの、手術の歴史が浅いために長期治療成績が不十分。
「お互いの手術がもう一方の手術のデメリットを補っているという関係ですね。現在は医療デバイスが非常に進歩しており、脳動脈瘤内塞栓術はより安全かつ確実に行えるようになっています。つまり、『どちらかの手術があればいい』というのではなく、『双方の手術が状況に応じていつでも選択できる準備が必要である』ということは確かです」。
冬はくも膜下出血リスクがアップ
くも膜下出血の最大の危険因子は血圧だが、屋内と屋外で寒暖の差が激しくなるこれからの時期は高血圧に陥りやすい。その分だけ、発症のリスクが高まるということになる。検査・治療法が日々進歩しているのはうれしい限りだが、くも膜下出血の致死率が高いという事実は揺るがない。これを機に、日常生活における予防の重要性を再認識するようにしよう。
記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)
日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。