クアルコムは11月22日、同社が擁する最新音響技術の説明会を開催した。デジタルアンプIC「DDFA」とオーディオコーデック「aptX」について、いち早く製品に採用したメーカーの担当者をゲストに迎え、その特長を紹介した。

独自技術で高音質を実現したフルデジタルアンプ「DDFA」

クアルコム CDMAテクノロジーズ マーケティングマネージャー 大島勉氏

DDFAは、2015年に買収手続きを終えた英CSR社が開発したデジタルアンプIC。名称は「Direct Digital Feedback Amplifier」に由来しており、フルデジタルでありながらフィードバック機構を持つこと、内蔵の小型DSPによりボリューム/トーン調整など高度な音声処理が可能なこと、最大192kHz/32bitのハイレゾ品質デジタル音源を直接入力 (I2S) できることなどの特長を備える。

クアルコム CDMAテクノロジーズ マーケティングマネージャーの大島勉氏は、従来のデジタルアンプについて「アナログアンプと比較して、低消費電力と小型な点が評価される反面、音質面での評価が芳しくなかった。それはアーキテクチャによるところが大きく、PWM段以降のディスクリートデバイス、スイッチング電源に起因する揺らぎやノイズ、ローパスフィルターにおけるインダクターの直流抵抗成分がある」と説明した。

これに対しDDFAは、「高速なマスタークロック (108MHz) により、リファレンスとなる理想的なPWM信号を生成。そのリファレンス信号と実際の出力信号との差分を独自アルゴリズムに基づき誤差解析を実施し、誤差を最小化することで理想の波形に近いPWM信号として出力する」(大島氏)という。続いて0.004%を下回るTHD+N(高調波歪み+ノイズ)、117dB以上のS/N、60uV以下の残留ノイズ、2000以上のダンピングファクターなど、アナログアンプを凌駕する特性を披露した。

DDFAの回路構成

DDFAのSN比とTHD+N(高調波歪み+ノイズ)を測定したグラフ

D&Mホールディングス マーケティンググループ マネージャー 宮原利温氏

続いて、2015年1月発売のプリメインアンプ「PMA-50」でDDFAを日本初採用したデノンのマーケティング担当 宮原 利温氏が登壇。PMA-50は予約待ちとなるほどの大ヒットを記録し、ネットワークレシーバー「DRA-100」など同社デザインシリーズ製品での継続採用ににつながったという。2016年発売の「DNP-2500NE」はヘッドホンアンプ部にDDFAを採用、フルデジタルの革新的ヘッドホンアンプソリューションを実現した。

近日発売予定のヘッドホンアンプ「DA-310USB」では、いち早く新世代DDFAチップを採用。コンパクトながら、あらゆるヘッドホンを鳴らしきる駆動力を持つアンプに仕上がったという。

新世代DDFAチップは、従来はデジタル・モジュレーター(CSRA6601)とフィードバック・プロセッサ(CSRA6600)の2チップ構成だったものを1チップ化。DA-310USBのようにコンパクトな製品への搭載が可能になったという。新世代DDFAは正式発表前であるため、詳細なスペックは公表できないが、「来年1月開催のCESで明らかにする」(大島氏)とのことだ。

デノンではPMA-50とDRA-100、DNP-2500NEの3製品にDDFAを採用している

新世代DDFAを採用した「DA-310USB」