どちらのタイプにも共通する症状は「頭痛」「嘔吐」「意識を失うなどの意識障害」で、特に頭痛は「今までに経験したことのない突然の痛み」や「後頭部をハンマーで殴られた痛み」と称されるほどの激痛だという。

ただ、福島医師は脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の恐ろしさは別の点にあると指摘。それは「致死率の高さ」と「合併症」だ。

致死率については、まずくも膜下出血を発症すると約2割が即死するとのこと。救命センターに心肺停止状態で搬送されるケースも少なくないが、搬送後に手術を施してもすぐに再発するなどして、最終的には発症した人の半数程度が1カ月以内に死亡すると言われている。他の脳卒中に比べ、非常に予後が悪い疾患なのだ。

またもう一つの合併症に関しては、「通常破裂脳動脈瘤に対して緊急で再破裂を防ぐ手術を行います。この手術で再破裂を防ぐことはできますが、これで一安心はできません。というのもクモ膜下出血を発症した後、『脳血管攣縮(れんしゅく)』という合併症を起こすケースがあります。これはくも膜下出血が原因で脳の血管が急激に細くなることで血液の流れが悪くなり、脳梗塞を起こしてしまう病気です。多くはくも膜下出血を発症して2週間以内に起こり、おおよそ2割ぐらいの方が発症するのではないでしょうか」。

脳梗塞になると手足や顔のまひ、失語、視野の欠如といった後遺症に悩まされることになる。出血の程度にもよるが、くも膜下出血発症後に社会復帰できる確率は「4人に1人ぐらいでしょうか」と福島医師は話す。この脳梗塞の後遺症が、社会復帰を阻む"壁"となりうることは想像に難くないだろう。

断続的な頭痛が発病の兆候の可能性

では、くも膜下出血には発症前に何らかの"兆候"はあるのだろうか。福島医師はシグナルの一つとして「断続的な頭痛がある」と話す。

「くも膜下出血での微少な出血が頭痛を引き起こす場合もありますし、動脈瘤が裂け始めて頭痛がすることもあります。1~2週間ぐらい断続的に続く感じですね」。

思わぬ形から動脈瘤が見つかるケースもある。例えば、眼球の動きを司る脳神経「動眼神経」の近くで動脈瘤ができ始めると、次第に動眼神経が圧迫されだし、物が2重に見える(複視)ことがある。不審に思った患者がまず眼科を受診したところ、脳外科を紹介されて動脈瘤発見につながることもあるとか。

この複視は厳密に言えば、くも膜下出血そのものの前兆ではないが、そのトリガーとなる動脈瘤破裂の前駆症状(ある病気の起こる前兆として現れる症状)と言えるだろう。