タントのノウハウを登録車に
発表会でダイハツの開発担当者数人に話を聞いた。その中で印象に残った言葉のひとつは、軽自動車「タント」の拡大版を狙ったという言葉だ。タントはそれまでの軽自動車より背の高いボディとスライドドアを装備してデビュー。現行型では助手席側スライドドアをセンターピラー内蔵のピラーレスとしたことで利便性を高めたことが評価され、軽自動車のベストセラー争いをしている。
こうした経験から、パッソ/ブーンに続き、軽自動車の経験を活かした登録車として開発を進めたようだ。しかし今回のトールワゴン4兄弟は、助手席側にもセンターピラーがある。その点については2つの理由を挙げていた。
ひとつは軽量化により燃費性能と動力性能を高めたかったこと。ピラー内蔵スライドドアはドアの重さが増し、それを支える骨格も補強が必要となるので、車両重量アップにつながるという。そしてもうひとつの理由として挙げたのが、ダイハツ自身が自分たちの強みだと発表会でアピールしていた“お客様視点”だ。
ダイハツ車に通底する“お客様視点”
以前、同社の軽自動車「ムーヴキャンバス」を記事で取り上げた際、晩婚化が進む未婚女性とその母親が共同で使うシーンを想定して開発されたことを紹介した。あのエピソードを思い出させるような背景があった。
タントはまだ子供が小さい家庭のファミリーカーとして企画された。子供を後席のチャイルドシートに乗せる際にはピラーレスのほうがありがたい。一方のトールワゴン4兄弟は、チャイルドシートを必要としない子供や、高齢者がいる家庭を想定。こちらはピラーに備えた手すりがあったほうが乗り降りしやすい。そこでピラーを残したというのがダイハツの説明だ。
エンジンはガソリン1リッター直列3気筒の自然吸気とターボを用意する。軽自動車以外の日本のトールワゴンやミニバンで、ターボエンジンを採用するのは少数派だ。それにダイハツはASEAN向けとして1.3リッターも持っているはずである。
実はここにも軽自動車の経験が生きていた。軽自動車では同じ660ccの自然吸気とターボというラインナップが定着しており、その図式を登録車でも展開したとのことだ。