ここからは本質であるハイレゾ音源の再生を試していくが、「ハイレゾ音源」と一口に言っても、今は様々なフォーマットのファイルが存在している。XDP-300Rは、「e-onkyo music」などのハイレゾ配信サイトで販売されている音源のファイル形式を一通りカバーするマルチなプレーヤーだ。
ファイル形式を変換したり、ダウンコンバート処理を加えて再生する場合もあるが、プレーヤー単体でDSDは11.2MHz、リニアPCMは384kHz/32bit音源の再生が可能。ネイティブ再生ができるのはリニアPCM192kHz/24bitまでとなる。本体のUSB端子からデジタルオーディオ出力もできるので、こちらを選んだ場合はなんとDSDは11.2MHzまで、リニアPCMは384kHz/24bitまでのネイティブ再生ができてしまう。
オーディオプレーヤーなのに高周波ノイズを発生させるCPUを乗せていたら、音質に影響が出ないのかと不安に感じるかもしれないが、XDP-300RではアンプやDACを搭載するオーディオ部とCPU部の基板をきょう体内部で完全に分離する構造を採用、デジタルノイズを低く抑え込んだ。
Wi-Fiにも対応することから、きょう体の内部にノイズの発生源ともなるアンテナも積んでいる。しかしここでも、オンキヨー&パイオニアイノベーションズが培ってきたワイヤレスオーディオ向けのアンテナ、およびノイズ対策のノウハウをしっかりと搭載したことで、オーディオ再生への影響を徹底的に回避している。
通常の3.5mm口径のイヤホン端子のほか、より高音質なサウンドが楽しめる2.5mm口径のバランス出力端子を新搭載した。同じバランス接続に対応するヘッドホンやイヤホンをつなげば、よりパワフルでステレオイメージが明瞭なサウンドが楽しめる。今回はソニーのリケーブルに対応するイヤホン「XBA-Z5」を用意して、付属する3.5mmイヤホン端子のケーブルと、サエクのバランス接続に対応するリケーブル「SHC-B120FS」(イヤホン側はMMCX端子)を用意して音も聴き比べてみた。
ハイレゾ再生は非常に解像感が高く、スマホの音に比べると格段にディティールの再現性が正確に感じられる。特に中高音域は色彩が豊かで伸びやかだ。音が明るく、鮮度も高い。宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」から『道』では、ボーカルの実在感がスマホによる音楽再生よりも格段と鮮明に表れ、余韻のふくよかさ、ヌケ味の清涼感に確かな"違い"を見せつけた。低い音のリズムも沈み込みが深く、安定している。
バランス接続のケーブルに変えてもう一度同じ曲を聴いてみる。ボーカルのメロディを頂点としたバンドの楽器との距離感や、音と静寂とのコントラストによって再現される奥行き方向の広がりが、ますますくっきりと見えてきた。ステージの情景がリアルに浮かんでくる。特に中低音域の分解能が高まり、音の輪郭に滑らかな切れ味が加わる。高音域は無駄な余韻の暴れをピタリと抑え込んだ、一段と精悍で引き締まった表情になる。
あらゆるエンターテインメントコンテンツの「音」をより高品位に、かつ柔軟に楽しむのであれば、オンキヨーの「DP-X1A」やFiiOの「X7」に代表されるAndroid OS搭載のオーディオプレーヤーも注目すべき選択肢になるだろう。なかでもXDP-300Rは、今スマホに加えて購入しても長く使える将来性を担保したプレーヤーであると言えそうだ。