男性は努力しようがない

田口先生: 男性も基本的に同じく喫煙・肥満・加齢で影響が出ますが、女性よりも直接的な影響は少ないです。逆に言うと、男性は努力しようがない、とも言えるでしょう。ただ、妊活という意味では性交渉をしなければいけないので、性交渉ができるかという問題はありますが。

男性も、ごく日常的な生活が大事になる

田口先生: 加齢に関しても、女性ほど如実な影響はなく、女性のように何歳からというような具体的な年齢もありません。ただ、精子も年齢ともに少しずつ質は低下します。精子は頭部には遺伝子が詰まっていますが、加齢とともにDNAフラグメンテーション(DNA断片化)が起こり、精子の異常が増えます。

一般的に、精子の数が少ないと質も低いケースが多いです。精子は検査をすることはできますが、一般的な検査では数と運動率(動いている精子)しかでませんので、質まで知りたい場合はもう少し特殊な検査になります。ちなみにですが、精子はつくられるのに何カ月もかかるので、精子の状態を反映しているのは2~3カ月前の自分の体調です。検査結果を知って、「昨日深酒をしたから」という人もいますが、それは関係ありません。

―先ほど、医療介入すれば妊娠可能な年齢を延長することができるという話がありましたが、妊活そのものは何歳くらいから始めればいいんでしょうか。

田口先生: 逆算しながら数値化してみるといいでしょう。例えばですが、東大に行きたいと思った場合、いつから勉強を始めるのかということを考えてみましょう。本当に東大に行きたかったら、中1,2くらいから意識して取り組む必要があるのではないですか。妊活で言うと、例えば子どもが3人ほしいと思った場合、何歳から妊活が必要になるかということを考えるといいと思います。授乳期間なども考えると、やっぱり20代の内から行動する必要があります。

20代は18%、35歳は9%、40歳は5%

―実際、自然に妊娠できる年齢は何歳くらいなんでしょうか。

田口先生: 正確な年齢は分かりませんが、文化や宗教的な理由で避妊をしない人々が最後に妊娠する年齢は41歳ぐらいとされています。もちろん、41歳を過ぎたら妊娠できないわけではなく、あくまでも平均です。

20代で排卵日に性交渉をもった場合、妊娠する確率は20%と言われています。年齢を重ねれば重ねるほど、確率はもっと低くなります。マウスの場合は100%妊娠することを考えると、人間はもともと不妊の生きものだと思った方がいいです。1個排卵した卵子が赤ちゃんになる確率で言うと、20代の場合は18%くらい、35歳の場合は9%くらい、40歳の場合は5%と考えられています。

自然に妊娠できる確率は歳とともに低くなる

―このタイミングだったら不妊治療のクリニックに行った方がいい、というタイミングはありますか。

田口先生: 先ほど述べた9%や5%にかけるのか、という話になると思うのですが、医療的な介入が必要になるのは35歳を過ぎたあたりだと思っています。ですが、特に年齢によらず、「子どもが欲しいな」と思ったり「妊活しよう」と思ったりした時に、まず一度行けばいいと思います。結婚してすぐでもいいです。「結婚してこれから子どもをつくろうと思っているんだけど、何か問題はありますか」という、婦人科的な一般的な検査を受けてみればいいと思います。大きい筋腫があるとか、卵巣腫瘍があるとかという大まかなことですね。

そもそも、不妊"治療"という言葉がよくないですよね。「病気だから治療」と思わない方がいいです。「あなた、不妊治療が必要ですよ」とは誰も言ってくれません。自分で行くしかないんです。不妊治療は妊娠するための"手段"だと思ってください。治療と考えるとハードルが高くなると思いますが、まずは排卵検査薬を買いに行く感覚でクリニックを訪れたらいいと思います。

―不妊治療のクリニックでは、婦人科で行っているような一般的な検査にも対応しているんですね。では、実際に不妊治療となるとどんなことをするのでしょうか。