「ホンダ孤立化」。日本の乗用車メーカー構図が3陣営に集約され、ホンダだけが単独になることで従来のホンダ自主独立経営方針も限界か、とささやかれる。
なぜホンダは自主独立路線を貫いてきたのか。それは創業者本田宗一郎以来の「ホンダらしさ」の追求にある。初代本田宗一郎氏の「技術は人間のために、独力で技術開発にこだわる」反骨精神が、これまでホンダには脈々と受け継がれてきた。歴代の社長は、ホンダの「本家」ともいうべき本田技術研究所社長経験者で「突っ張った」トップばかりだった。
もちろん、ホンダがどことも提携してこなかったわけではない。かつて国内ではフォードと提携し、フォード車販売ネットワークを構築。クライスラーとはジープタイプの販売で提携していた。国内ではいすゞと乗用車業務提携の関係もあった。海外では英ローバーと資本提携したこともあったが、この提携で苦い経験をして懲りたこともホンダの自主独立路線に繋がっている。
ホンダらしさ復活前提に異業種提携も含め方向転換か
「最近のホンダは変わったな」と、長年にわたりホンダをウォッチしてきた筆者は感じる。本田技研工業と本田技術研究所が両輪となり、2輪、4輪、汎用エンジンのみならず、最近ではロボットから小型ジェット機まで、独自の立ち位置を示してきたホンダ。しかし最近では、大企業病ともいうべき官僚体質的な面が見えるようになった。つまり、ホンダがただの大人の会社になったような感がする。やはり改めて「ホンダらしさ」を復活すべきだろう。
ようやく業績面で反転攻勢の兆しが見えるなかで、創業者の本田宗一郎氏以来のチャレンジ精神を前面に出していくこと、何といっても、本田宗一郎氏の技術屋というよりやんちゃな職人気質の「魂、熱意、チャレンジ」が引き継がれてきたのが「ホンダらしさ」なのではなかろうか。
ホンダの研究開発費は2017年3月期で6,900億円と過去最高水準にある。これはトヨタに次ぎ日産を上回るが、利益規模を見るとホンダの負担は重い。本田技術研究所という存在は、埼玉・和光に先端技術研究部門を置くなど独自の技術にこだわってきた。
先頃の中間決算発表では、「全て単独という時代ではない。双方にとってウイン・ウインの関係なら積極的にやるべきだと思っている」と倉石誠司副社長は提携について答えている。
すでに米GMとは燃料電池車で提携しており、共同開発で2020年をめどにFCV新車を投入する予定。米シリコンバレーに研究開発拠点を置いているし、9月には東京・赤坂にAIの研究開発拠点を新設する。
最近のホンダの動きで注目されたのが、ソフトバンクとAI分野で手を組んだこと。ホンダは7月22日、ソフトバンクと共同で人工知能技術「感情エンジン」をモビリティに活用するための研究を始めると発表している。これは、自動車に人の感情を読み取る「感情エンジン」を搭載しようというもので、ホンダとソフトバンクが共同研究で手を握るというのも注目される。
ホンダが連携強化への経営スタンスに切り替えていく中で、世界販売でも1,000万台クラスに復活してきた米GMとの提携拡大に進めるのか。それともソフトバンクとの提携のような異業種連携を進めるのか。新たな展開に入ってきたといえよう。