オフィスをつなぐ1本の階段とは?

オフィス内は3階~7階まで、吹き抜け型階段の「コミュニケーションステップ」でつながる構造となっている。

従業員が働くフロアをつなぐ「コミュニケーションステップ」

オフィスの随所に対話がしやすいスペースも

「人事や経理、マーケティングなど様々な部署がありますが、どうしても部署の中だけで固まってしまいがち。だからこそ、『コミュニケーションステップ』をつくることで、他の部署の人に偶然会って、仕事の相談するきっかけになるような、コミュニケーションを誘発する工夫をしています。

また、オフィス内はエレベーターも使用可能ですが、日頃デスクワークで座っている時間が長いので、社内を移動するときは足を使って、動いてもらうということも意識しています。歩き回ることで、気分を切り替えて新しいアイデアが生まれやすくなるように、といった意図があります」(広報担当者)。

オフィス内には"役員室"のフロアがない?

社員が実際に仕事をしているデスクも、今回特別に見せてもらえた。柱や仕切りのないオープンな設計で、従業員同士のアイコンタクトを促進する環境となっている。また、個人用ゴミ箱の廃止(集約型ゴミ箱の設置)やコピーエリアを各階1箇所に集約し、あえてデスクからの距離を取ることで、ゴミや無駄な印刷物を削減する工夫もされていた。

このほか、新オフィス内には役員室のフロアを設けていないことも特徴的だ。各役員が統括するチームが働くフロアに、役員の部屋が併設されている。「移転前は役員室のフロアがありましたが、社員からすると入りにくいと感じるフロアでした。基本的に仕事はチームで動くので、役職も関係なく話がしやすい方が良いと考え、併設する設計に。新オフィスでは、いつでも相談しやすい環境になりました」(広報担当者)。

自社製品を使ったメニューのあるカフェテリアも!

社員専用のカフェテリア「コカ・コーラ カフェ」は、昼食だけでなく、朝食も提供し、1日の始まりから社員の健康とパフォーマンス向上をサポートしている。同社製品の飲料が飲めるほか、サラダバーの提供も。朝限定でスムージーの提供も行っているそうだ。

カフェテリア入り口の黒板に日替わりメニュー

見上げるとコンツアーボトルが!

メニューは日替わり。料理の中に同社製品が使われることもあり、中には豚肉を「コカ・コーラ」で煮込んだ角煮などもあるのだそう。この日はサラダのドレッシングに「ミニッツメイド」が使われていた。カフェテリアで食事をしているときも、自分たちが扱っている製品を身近に感じられるように、という意図があるそうだ。

カフェテリア名物メニュー「赤カレー」240円(税込) ※「コカ・コーラ カフェ」は日本コカ・コーラの社員専用のカフェテリアとして運営している

「ミニッツメイド」のピンクグレープフルーツ味を使ったドレッシング

ガラス張りなので、日当たりも良い

本社アメリカと同基準の環境にやさしい設計

オフィスは、アメリカの建築基準を採用して設計している。要件のひとつに環境への配慮がある。例えば、カフェテリアのフローリング床材には、WWF(世界自然保護基金)によって、森林の管理や伐採を環境や地域に配慮していることが評価された「FSC認証木材」を使用。

また、オフィス内は節水型器具の設置や雨水の再利用により、節水量がアメリカの法定基準値(Energy Policy Act)の64%削減を計画。年間で約239万リットルの節水になる。同社製品であるミネラルウォーターの「い・ろ・は・す」1本555mlあたりで換算すると、約431万本分に及ぶそうだ。さらに、屋上にはソーラーパネルが設置されており、一部自家発電で節電している。

このように、同社では建物に使われている素材もエネルギーや資源も配慮し、長期的にビジネスを展開するのにふさわしいオフィスを目指しているとのことだ。

まとめ

同社の新オフィスでは、自社製品をふんだんに使ってブランドを表現する"Brand Heritage"(ブランドの伝承)、「コミュニケーションステップ」の設置などで、社員間が会話しやすくする"Collaboration"(コラボレーション)、環境に配慮した設計の"Sustainability"(持続可能性)の3つの要素が詰まっていた。以前、本誌が取材したソニーのオフィスでも、意図的にコミュニケーションが取りやすい仕掛けやリラックスできる環境づくりでアイデアを生みやすくする工夫がされていた。こうしたオフィス設計も、日々社員が働くモチベーションの向上や事業の活性化のために重要な要素なのだろう。