米ヤフーといえば、検索エンジン登場前、インターネットにどんなウェブサイトがあるか、をまとめる電話帳のような存在として重宝されてきた。その後はポータルサイトとして、インターネットを、テレビを超えるメディアと広告の場として押し上げる重要な役割を担ってきた。
そんなネット企業の老舗が、米国最大の携帯電話キャリアであるベライゾン・ワイヤレスに買収されることが決まったのは2016年7月26日のことだ。48億3000万ドルの現金で、ヤフーの本体事業、すなわち広告・コンテンツ・検索・モバイルの一切がベライゾンの手に渡る。
ベライゾンは2015年にも、同じくインターネット黎明期を支えたプロバイダとして出発したメディア企業AOLを44億ドルで買収済みだ。ベライゾンはモバイルキャリアの本業に加え、モバイルコンテンツ・広告企業としての地位を固める投資を行ってきたことになる。 その点で、ヤフーが持つ6億人のモバイルユーザーを含む10億ユーザーを手に入れることは、大きな価値を持つ。
暗雲が立ちこめる買収
ベライゾンによるヤフー買収は2017年第1四半期に完了するとみられていたが、ここにきて問題が発生している。ヤフーの2012年時点でのユーザーデータが、ウェブサイト上で売買されていることが、2016年9月に発覚したのだ。この盗まれたデータには氏名とメールアドレス、生年月日、電話番号、暗号化されたパスワード、秘密の質問の答えが含まれており、少なくとも5億件に上るという。
ヤフーは当初、国家の関与もほのめかしていたが、同社、そして書記の調査に当たっているFBIからも、具体的な証拠は示されていないのが現状だ。データが売買されていることから、政治的な意図を持ったハッキングとは考えにくい。
ベライゾンのCFOであるフラン・シャモ氏は、ヤフーのユーザデータの流出件数について非常に膨大であることを指摘し、ヤフーにとって極めて大きな影響を与えるとの考えを表明した。
ベライゾンにとってヤフー買収は実現したい戦略であることに変わりないが、魅力の1つとなっていたユーザーの半数がハッキング被害に遭っていることは、ヤフーの価値を大きくそぎ落とすものにほかならない。買収金額の減額や、買収そのものを破棄することも、可能性として視野に入るとの見方もある。