最新のTrue Image 2017は処理スピードも向上
―― あまり表には出てきませんが、True Imageはバージョンアップのたびに処理速度が向上しているそうですね。
マグダヌロフ氏「バックアップを取るに当たって、True Imageは内部的にいくつかのシナリオを用意しています。フルイメージなのか、差分なのか、小さなファイルが多いのか……など、それによって最適なパフォーマンスとなるシナリオ(編注:アルゴリズムのようなもの)を使って処理します。特に、イメージバックアップに関しては、業界最速を自負しています。
少し話がずれますが、Windows、Mac環境でParallelsのソフトウェアを使っている方も多いと思います。True ImageはParallelsにアクセスして、バーチャルマシン上の差分だけをバックアップでき、それがスピードアップにつながっています。AcronisとParallelsが姉妹会社というメリットを生かした機能ですね。
クラウドへのアップロードとダウンロードを高速化するテクノロジーもあります。お客さまとデータセンター間のスピード阻害要素として、ルータなどネットワークデバイスが原因となるケースがあり、TCPに合わせてTrue Imageのパラメータを調整します。すると、ネットワークから最大のキャパシティを得られるのです」
「このデータが本物」だと、どうやって証明するのか
―― 今後のTrue Imageは、どのように進化していきますか? また、先ほどスマートホームのバックアップというお話がありましたが、様々な「データ」の保存やバックアップ環境がこれからどのように変わっていくか、お聞かせください。
マグダヌロフ氏「全体的なところからお話ししましょう。ひとつ興味深い話題があって、デジタルフォレンジックス(※)を手がけている企業についてです。犯罪に使われたPCを押収したようなとき、True Imageのようなソフトウェアを使って、ストレージの全領域をイメージバックアップして解析します。のちの法定でエビデンス(科学的根拠)として使われます。例えば弁護士が、PCなどの証拠物件をフルイメージバックアップしていて、『当時の情報すべてです』と開示できるわけですね」
※デジタルフォレンジックス 犯罪捜査などにおいて、デジタル機器に残っているデータを集めて分析し、法的な証拠とする技術、手法。
マグダヌロフ氏「Acronisが会社として、そうしたケースを想定しているわけではないのですが、『バックアップデータが改ざんされないためにはどうしたら良いか』、これは今後ますます重要なテーマとなります。Acronisが研究開発として取り組んでいるのは、ブロックチェーン(編注:詳細は割愛)という比較的新しい技術です。
ブロックチェーンはビットコインや金融機関の取引記録などで使われており、電子署名を世界中のコンピュータに分散格納します。データに対して何らかの改ざんが発生した場合、復元や『偽物という証明』が可能です。
例えば、政府が保持している記録があって、そのサーバーにクラッカーが入り込んで記録を改ざんしたとします。しかしブロックチェーンを使えば、世界中のサーバー、様々なPCに正統な記録を分散保持できるので、1つ2つの記録を改ざんしても意味をなしません。世界中に散らばっているデータを改ざんすることは不可能なので、クラッカーは攻撃できなくなるという考え方です。
今日(こんにち)、すべての情報がデジタルとして保存されるようになりつつあり、いずれはデジタルのみで加工、保存する時代になるでしょう。仮に、私がFacebookの古い投稿を見返したときに、私が知らない場所で、妻ではない知らない女性と笑っている写真があったらどうしましょう。極端な例えですが、このような写真の改ざんも技術的には可能なわけです。『データを改ざんされないようにすること』、『このデータが本物だと証明する手法』が重要となります。Acronisは、今こそ我々がこの問題を解決していかなければならないという、ユニークなビジョンを持っているのです」
―― そうした技術は、やがてはTrue Imageのようなコンシューマ製品にも搭載されるのでしょうか。
マグダヌロフ氏「はい。すべての製品に実装していきます」
―― 本日はありがとうございました。