参考出品の形で発表された「DA-310USB」は、2014年2月に発売された「DA-300USB」の後継モデル。USB DACおよびヘッドホンアンプとしての機能については基本コンセプトを継承したが、プリメインアンプの「PMA-50」やネットワークレシーバー「DRA-100」と同じ「デザイン・シリーズ」に属す製品としてリニューアルした。
一方で、スペックは大幅に向上。DSD 11.2MHzやPCM 384kHz/32bitに対応し、より広範なハイレゾフォーマットの再生が可能になったほか、ビット拡張や周波数拡張によりデノンが狙う音を創り出す音響技術の最新版「Advanced AL32 Processing Plus」を搭載した。
大きな見どころは、クアルコムによるフルデジタルアンプ「DDFA」の新世代版を世界で初めて採用したこと。同じデザインラインに属す「PMA-50」と「DRA-100」は、CSRA6600とCSRA6601のチップセットで構成される従来版DDFAだが、「クアルコムが擁するオーディオエキスパートの力により、最新のテクノロジーとハイエンド級の資産を1チップに集積した」(クアルコム マーケティングマネージャー 大島勉氏)と、大幅な小型化を実現した。ただし、新世代版DDFAの詳細については「正式発表前でありコメントできない」(大島氏)とのこと。
設計を担当した飯原弘樹氏は、DDFAの特長を「フルデジタルでありながらフィードバック機構を持つこと」と説明。これにより音に悪影響をもたらすDCオフセットを取り除けるため、カップリングコンデンサーが省略可能となり、その結果コンデンサーに起因する音の変化を排除、鮮度が高く迅速な立ち上がりのサウンドを実現できたという。
DA-310USBには、DACとして「BurrBrown PCM1795」を搭載しているが、これを通るのはライン出力時に限定する。入力した信号のほぼ全てはFPGA上に実装されたAdvanced AL32 Processing Plusを通るが、「DSDはAdvanced AL32 Processing PlusをスルーしてDACに伝送される」(飯原氏)という。ヘッドホンアンプ使用時は、Advanced AL32 Processing Plusでビット拡張や周波数拡張を行う都合上、PCM変換になるとのことだ。
ヘッドホンアンプとして試聴したところ、高い解像感とレスポンスの速さ、音場の自然な広がりは歴然。サウンドキャラクターは前モデルのDA-300USBよりPMA-50やDRA-100に近く、それだけDDFAの果たす役割が大きいことがわかる。CDクオリティの音源も、Advanced AL32 Processing Plusの効果か、デジタル的でない滑らかな印象だ。ヘッドホン使用時のDSD再生はPCM変換となるが、しっかり「デノンの音」として成立している。
発売日と価格は明らかにされなかったが、「年内の発売を予定しており、11月上旬には正式発表する」(宮原氏)とのこと。楽しみに待ちたい。