テクニック的にも新しい挑戦

――10月19日発売となる13thシングル「What A Beautiful World」。1年4カ月ぶりのシングルとなりますね。

皆さまが思っていただいている牧野由依の楽曲イメージに近く、延長線上にある楽曲ですね。きれいな世界観なので、白く澄んだ形を見せられると思います。歌詞について意外だなと思ったことがありまして、曲のタイトル名が歌詞に入る場合、サビに出てくるのが定番なのかなと思っていました。でも、「What A Beautiful World」がBメロや最後など、印象的なところで使われていて、そうくるんだ……と。

――リズムが難しい楽曲でもありますね。

初めは4拍子で、途中ですーっと6/8拍子に変わるという変則的な楽曲です。ゆったりと始まり、たゆたうようなリズムの雰囲気になります。特に大変だったのは、2オクターブちょっとなんですけど、音域をフルに使っていることですね。下も上もギリギリで、もう身動きの取れない状態。なおかつ最後の方で転調するので、仮歌の時点で「転調をどうしようか」、「転調しないパターンもありなんじゃないか」と物議を醸しました(笑)。

――音楽プロデューサーの矢野博康さんと。

はい。最終的に、「これは歌い込んでレコーディングに臨めばできる」と一度持ち帰って、この形になりました。

――いままで挑戦したことないくらいのギリギリさ?

矢野さんの楽曲って音域的なところでいうと……エグめです(笑)。無理すれば出るんですよ。2015年10月発売の4thアルバム『タビノオト』の「ワールドツアー」でも、「F#のファルセットでなら出せるな」という箇所があったんですけど、「とりあえず地声でいってみますか」と録ってみたテイクを使っていて、「これはイベントで歌うときも地声でいかないとダメですね」って(笑)。そのときに「いける」と思ってくださったのか、今回もまた高いところがきました(笑)。激ムズというわけではないんですけど、テクニック的にも新しい挑戦ですね。

――矢野さんも、「牧野さんならここまでいける」というのを完全に計算しているんですね。

そういうことはおっしゃっていましたね。「いけるんじゃないかなと思って作っちゃったんです」みたいに(笑)。

――その信頼感が絶妙なんですね。

鍛えていただきましたね。

――楽曲についても、かなり矢野さんとやり取りされているということでしょうか。

仮歌からやりますね。例えば転調に関しても、「突然転調するバージョン」、「ブレイクしてから転調するバージョン」など、3~4パターン出していただいて、「私はこっちのほうが好きです」みたいなやり取りを。矢野さんのような方が私とこんなに意見交換をしてくださるというのはありがたいです。

スっといけたレコーディングはない

――2曲目は「ウイークエンド・ランデヴー」。こちらも歌詞が印象的ですよね。

独特な雰囲気というか、とにかく矢野さんの言葉のチョイスがすごい! 「モナムール」ってなかなか聞かないですよね。でも、そう思っていた翌週にアフレコの予告で「モナムール」という単語が出てきて、30年間の人生でそんなに聞いたことがない単語が、一週間で2回も出てきた! って(笑)。

――まるで運命の言葉ですね。

「モナムール」も「ランデヴー」も、なんだか一周回って新しく思えますね。いまの若い子が「昭和歌謡が好き、落ち着く」と言っているのと通ずる部分があるのかなって。新しい感じがしつつも心が落ち着く感じ。素敵なセンテンスもあるので歌っていて楽しく、心地良いですね。

――こちらのレコーディングはスッといけました?

いままでスっといけたレコーディングはないです(笑)。「What A Beautiful World」はカロリーを使いましたけど、「ウイークエンド・ランデヴー」は自分の中で固まるまでに時間がかかりました。でも、その分「私はこんな風に作ってきましたけど、どうですか?」みたいに、レコーディング自体は楽しかったですね。

――どういった作業によって「固めていった」のでしょうか。

毎回なんですけど、コーラスのボリュームがめちゃくちゃあって、作業がなかなか終わらないんですよ。矢野さんは、私の声が重なると倍音がきれいに響く点を生かしてくださっていて、「あとでこれが欲しかったのに録っていなかった」ということがないようにコーラスの量をマックスで録音します。倍音が出るようなエアリーな歌い方をしたり、メインボーカルと同じようにダブルで歌っている感じで録音したり、パターンが多いんですね。そこからミックスの段階で引き算をしていきます。「ここはトゥーマッチだったな」とか「ダブルで録ったけどシングルで使いましょう」みたいに。

――そうやって研ぎ澄ましていく。録音したけど世に出ない部分の方が多いこともあるわけですよね。かなりぜいたくというか。

こういう作業を行うことによって、牧野由依というアーティストの軸や、音楽性、世界観を作っているんだと思います。なので、雑にはできないですよね。

――確かにこれは、スッとはいけないですよね。

毎回、レコーディング中は立ちっぱなしなので腰が痛くなります(笑)。メインボーカルの録音は1時間くらいで終わるんですけど、そこからセレクトしてメインが出来上がって、コーラスを録っていって、途中でメロディラインが変わることもあり……。昼に始まって夜中に帰ることが多いです。コーラス作業を延々と続けることによってゲシュタルト崩壊を起こしてくるときもあるんですけど、上手に重なったときは世界観が広がります。これだけこねくりまわしていると愛着もわくし、感動もひとしおですよね。

私の中にある景色を、歌を通して伝えたい

――牧野さん自身が「What A Beautiful World」だなと思った出来事はありますか?

この素晴らしき世界は、ってことですよね(笑)。

――そんな壮大なことはなかなかないとは思うのですが。

そうですね、私は海外に行くことが多いので、よく飛行機に乗るんですよ。機体が安定飛行に入ったときに見える、上にも下にも雲があり、陽の光がはしごみたいに差し込んでいる瞬間が好きなんです。天使のはしごと言うんですよね。浮世離れしているなあって。

――薄明光線ですね。確かに素晴らしい眺め。

あと、『アイドルマスター シンデレラガールズ』のライブ中に、ステージから見るサイリウムの光。あれだけ大量にサイリウムを降っていただけると、きれいですよね。あれもなかなか見られない景色です。

――『シンデレラ』では最近だと9月3~4日に開催された神戸公演や、10月15~16日のさいたまスーパーアリーナ公演ですね。『シンデレラ』の佐久間まゆや『プリパラ』の黒須あろまなどもそうですけど、キャラクターとして歌う機会も多いですよね。牧野さんは特にキャラクターをそのまま体現しているという印象が強いです。

牧野由依として歌うときは、私がいままで見てきたものや感じてきたことを、なんとか自分の引き出しから引っ張り出して、「私の中にある景色を、歌を通して伝えたい」という気持ちで歌っています。これがキャラクターになると、自分の中に正解はないんですよ。キャラクターを作っているスタッフさんがいて、私よりもそのキャラクターの正解を持っているかもしれないお客さんがいる。なので、まずその正解をどこに置くかを探していきます。「このキャラクターはこういうことを考えながら歌っているだろうな」と。そうして歌っているときからキャラクターになりきらないと、たまに牧野由依が見え隠れしてしまうんです。そこは気をつけるようにしていますね。

――その芯から外れないようにと。とてもキャラクターを大事にされているというのが伝わってきます。

根幹にあるのが「見てくださっている皆さまを裏切ってはいけない」という気持ちです。できるできないではなく、やらなければならないということかもしれないですね。でも、その中に遊びがないと見ている方もつまらなくなってしまうから、とりあえずやりきってみます。「やりすぎです」と言われたら戻しますので(笑)。

いままで開催した国の方からフラワースタンドを

――昨年、声優・歌手デビュー10週年を迎え、11年目のいま思うことは?

そうですね。オーディションを受けた大学1年生のときは歌を歌う人になるとは思ってもいませんでした。仕事を始めたので大学を辞めるという選択肢もありましたけど、「あんなに大変な思いをして入って、学費も払ってもらって……辞める?」って。大学と仕事を両立するのは簡単ではないですけど、「由依は仕事をしているから成績が悪くても仕方ないよね」と言われるのは嫌だったんです。点数上位の人が出場できる選抜の演奏会があったんですけど、「絶対卒業するまでに出てやる」と思いながらやってきて、なんとか単位も落とさず、卒業のタイミングで演奏会に出演できたのが、私の中で誇りに思っていることの一つです。

――そのときに貫き通した信念がいまの牧野さんを支えているのかなと。

今も時間的、体力的に大変だなと思うことはありますけど、毎日新しいことに挑戦していたデビュー時のことを思い返すと大体のことはできますよね。いま「あの頃にもどってもう一度やれ」と言われたら弱音を吐くと思います(笑)。声優としてはお芝居やテクニックなど、常に自信がないんですよ。「もしかしたらもっとほかの表現があったかもしれない」とずっと思っています。デビューから12年目ですけど、いまだに現場で影響を受け続けています。

――牧野さんほど多彩な方でもそう思われるんですね。

いろいろな方から「声優をやって、歌を歌って、ピアノも弾く人はそういないよね」と言われますけど、私はできることをやっているだけなんです。それに、いまは歌を歌っている声優さんは多いですし、その中でピアノを弾けることが武器になると思っています。「ほかにいない」と言われるなら、そのままぶっちぎれるくらい確立できないといけない。私がこの10年で経験したことをすべて表現できるように歌い、弾き語り、お客さんと築き上げてきた関係性を生かして、さらに多くの方に聴いていただけるようにがんばっていきたいですね。

――現段階での牧野さんの「夢」や「目標」は?

海外に多く行っているというチャンスを、どう形としてつなげていくかを考えています。オーケストラをバックに弾き語りをしたり、あわよくば海外で単独コンサートをやったり……。あ、とてもうれしいことに、ライブのたびにファンの方からフラワースタンドをいただいています。それがなんと先日、韓国の方からも届いていたんです! それは、いろいろな国の方に観ていただいて、「その方たちと会えた」という証なのではないかと思います。なので、日本でコンサートをしたときに、いままでステージでパフォーマンスをした国の方たちからフラワースタンドをいただけたらうれしい。それがいまの夢ですね!

牧野由依13thシングル「What A Beautiful World / ウイークエンド・ランデヴー」

発売日:2016年10月19日
●初回限定盤A(CD+DVD)
価格:1,852円(税抜)
収録内容
CD
01 What A Beautiful World
02 ウイークエンド・ランデヴー
DVD
・ジャケット撮影メイキング映像
・「アムリタ」(「Yui Makino Concert~twilight melody~」@恵比寿ザ・ガーデンホールより)

●初回限定盤B(CD+DVD) 価格:1,852円(税抜)
収録内容
CD
01 What A Beautiful World
02 ウイークエンド・ランデヴー
DVD
・海外イベント ダイジェスト映像
※「2016 Janfusun Fancyworld Popculture Festival」(台湾・雲林)、「FUN成都ゲームアニメフェスティバル」(中国・成都)、「C3 CharaExpo 2016」(シンガポール)の模様を収録

●通常盤(CD)
価格:1,111円(税抜)
01 What A Beautiful World
02 ウイークエンド・ランデヴー
03 What A Beautiful World(Instrumental)
04 ウイークエンド・ランデヴー(Instrumental)

初回限定盤A(CD+DVD)

初回限定盤B(CD+DVD)

通常盤(CD)

「What A Beautiful World / ウイークエンド・ランデヴー」発売記念イベント

日程:2016年10月22日
会場:兵庫・阪急西宮ガーデンズ 4階スカイガーデン・木の葉のステージ
時間:①13:00~ / ②15:00~
内容:ミニライブ / 握手会(1枚の握手券で1回握手。1回参加につき1枚の握手券が必要)
参加対象:観覧自由(握手会は参加券が必要)

日程:2016年10月23日
会場:神奈川・ららぽーと横浜 1Fセントラルガーデン
時間:①13:00~ / ②15:00~
:内容:ミニライブ / 握手会(1枚の握手券で1回握手。1回参加につき1枚の握手券が必要)
参加対象:観覧自由(握手会は参加券が必要)
詳しくは公式サイトにて

牧野由依サイン色紙プレゼント

■応募期間:2016年10月19日から2016年11月19日まで ■内容:牧野由依サイン色紙 ■当選人数:3名様 ■応募方法 1.マイナビニュースホビー公式Twitterをフォロー 2.ハッシュタグ「#牧野由依サイン色紙プレゼント」と、本記事タイトルとURLを付けてツイート(コチラをクリックするとツイートリンクに飛べます)。 当選者には応募締め切り後、マイナビニュースホビー公式Twitterからダイレクトメッセージにて、送付先情報(送付先住所、受取人氏名、電話番号)を伺います。 ※ダイレクトメッセージ送信後48時間以内にご連絡のない場合や、フォローを外された場合(その場合ダイレクトメッセージを送付できません)は当選を無効とさせていただきます。 ■当選条件:日本国内にお住まいの方 応募にあたって以下を必ずお読みください。応募には以下の「個人情報取扱いについて」に同意いただく必要があります。「個人情報取扱いについて」に同意いただけない場合はプレゼント抽選の対象となりません。 (1)個人情報取扱いについて:マイナビでは個人情報保護マネジメントシステムを構築し、正しい個人情報の取扱および安全管理につきましてできるだけの体制を整え、日々改善に努めています。当社が運営するマイナビニュースにおいて、読者の皆様からお預かりする個人情報は、プレゼントの発送などに利用いたします。 (2)開示等、個人情報の取り扱いについてのお問い合わせ:株式会社 マイナビ ニュースメディア事業部 編集部 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1パレスサイドビル news-reader@mynavi.jp (3)個人情報保護管理者:株式会社 マイナビ 管理本部長 personal_data@mynavi.jp