バイエル薬品はこのほど、日本人男性の1,200万人以上が罹患していると推測されているED(勃起障害)に関するプレスセミナー「生活習慣病や男性不妊・更年期と密接に関わるED治療の最新事情」を開催した。当日は医師による講演や、「EDに関する現代人の意識調査」の結果などが報告された。
EDは心筋梗塞や脳梗塞の前触れ
総務省統計局発表のデータでは、日本人男性の1,200万人以上が中度、および重度のEDであると推測されている。50~60代では2人に1人がEDといわれており、日本の高齢化に伴い今後はさらに増加することが予想されている。
今回、同社ではED治療に関する実態を調査するため、全国の20~69歳の男女を対象にインターネットリサーチを実施。それを踏まえて、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科の科長、辻村晃医師が講演を行った。
まず、EDとは「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態」と定義されている。ED診療ガイドラインにおいては、「加齢」「喫煙」など13のリスクファクターが挙げられており、「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」「肥満と運動不足」など、メタボリックシンドロームと共通する因子も挙げられている。そして、64%のED患者が何らかの生活習慣病を合併しているという。
先のインターネット調査では、「自分もしくはパートナーがEDだと思う」と回答した人は17.2%だった。そのうち、生活習慣病にかかっている人はEDと思っていない人では7.7%だったのに対し、EDだと思うと回答した人では26.0%となった。EDと生活習慣病の両方を自覚できているのは3割程度ということになり、先の生活習慣病の合併頻度64%とはかなりの開きがある。
2つの数字の乖離は、ED治療への消極的な姿勢が原因と考えられている。アンケート調査ではED治療にためらいを感じる人が52.1%にのぼり、「人に知られるのがはずかしい」「治療にお金がかかりそう」「病院に行くのが面倒くさい」などの理由が挙げられた。
だが、EDは血管の健康と密接なかかわりがあると辻村医師は話す。「EDは循環器疾患であり、心筋梗塞や脳梗塞などの血管障害の予兆とみることもできます。冠動脈や内頚動脈に比べて陰茎動脈は非常に細いため、障害が最も早く現れるためです。心筋梗塞についてEDが先行した患者の割合が67%であったとする報告もあり、EDになってからおおよそ3年で心筋梗塞になっていることになります」。
EDは心血管疾患や生活習慣病の指標となるが、インターネット調査では心血管疾患との密接な関係性について認知している人は約1割程度。EDは体の重大な変化の"サイン"であることへの認知が非常に低い実態が明らかになった。