グーグルにとっても痛手に

サムスンにとって、フラッグシップのスマートフォンから得られる収益をまるまる失ってしまったことは、非常に大きな損失だ。

ロイターは、リコールによる初期の損失の50億ドルに加えて、機会損失による170億ドルの収益を失うと試算している。加えて、サムスン、そしてGalaxyのハイエンドスマートフォンとしてのブランドの毀損は、今後のサムスンのビジネスをゆがめていくことになる。

Galaxy Note7は、Androidスマートフォンの中でも、ハイエンドに位置するデバイスであり、発火事件が起きる前の評価は非常に高かった。今回の件はAndroid陣営を率いるグーグルにとっても、最も優れた体験を提供する手段を失ったことになる。

グーグルは10月4日にサンフランシスコでイベントを開き、「Made by Google」ブランドのデバイス群を披露した。目玉は、5インチ、5.5インチのスマートフォン、PixelとPixel XLであった。Nexusは製造メーカーをフィーチャーしてきたが、Pixelは、グーグルブランドで送り出されるハイエンドスマートフォンとして、新たなブランドの立ち上げとなった。

「Made by Google」ブランドのPixel

これはグーグルが、OSプラットホームの提供だけでなく、エンドユーザーの体験をデザインすることに取り組む姿勢を表すものであり、Android最高の体験を他社に任せず自ら行う意志と受け取っている。Galaxy Note7の販売停止は、グーグルにとっては当然頭の痛い問題ではあるが、一方でPixelの存在感と、グーグルによる体験作りへの関与という意義を高めることになるだろう。

アップルほかスマホ市場への影響は?

長らく、サムスンのGALAXY Sシリーズと、あらゆる点でライバル関係にあったのは、アップルのiPhoneだ。ここ最近、法廷では、サムスンによるデザインの模倣が認定されるなど、アップルに有利な展開が続いている。

Galaxy Note7の欠落が、Andoridが85%を占めるスマートフォン市場の構造に直ちに影響を与えるとは思えないが、アップルのライバルが、サムスンからレノボやシャオミなどの中国メーカーへ移行する速度は速まっていく。そのため、短期的には、ハイエンドスマートフォンブランドのライバル不在状態が、iPhoneのセールスに貢献するように見える。

しかし、649ドルからの高級スマートフォンの主な市場である先進国市場では、AndroidからiOSへとスイッチするユーザーは多くて15%に留まっており、前述の通り、スマホ市場の構造を変えることはないだろう。