発表最多のimecは世界中と協業
研究機関別発表件数(登壇者の所属組織で分類)では、地元のimecがいつもながらトップで11件だったが、今回はSTMicroelectronicsが9件(フランス7件、イタリア2件)と奮闘、米国に本拠を置くEntegrisが世界規模の活躍で5件(台湾3件、ドイツ2件、米国1件)発表したことは特筆に値する。Samsung Electronics(韓国)とGLOBALFOUNDRIES(米国)が各3件、静岡大学、ソニー、スクリーン、中国SMIC、米Lam Research、グルノーブル・アルプス大学(仏)が各2件と続いた。
imecが筆頭著者となっている発表の共著者には、ルーベンカトリック大学、ブリュッセル自由大学(ともにベルギー)はじめ, ベルギー、フランス、ポルトガル、ハンガリー、韓国、各国の大学、スクリーン(日本)、Entegris(米国、ドイツ)、Park Systems(韓国)、Nanotools(ドイツ)、BASF(ドイツ)、SUSS MicroTec(米国、ドイツ)など装置材料メーカーの名が入っている。一方、Entegris(ドイツ、米国)、スクリーン、栗田工業が筆頭著者となっている発表にもimecが共著者となっており、imecが世界規模で、研究協業している姿が浮かび上がる。
フランスからの発表のうち、CEA-Leti (原子力・代替エネルギー庁電子技術情報研究所)とSTMicroとの共著発表が3件、STMicroとグルノーブルアルプス大学との共著が3件、同大学とCEA-Letiとの共著が1件あり、これら3組織の協力体制がうかがえる。CEA-Letiには従来よりSTMicroの技術者が多数滞在しており、さしずめSTMicroの研究所の役割を果たしている。
入門講座でも非シリコン基板洗浄が中心テーマ
9月12日~14日の3日間にわたる本会議の前日11日午後に、チュートリアル(入門講座)が開催された。まず、長年にわたりUCPSSオーガナイザーを務めているimecの洗浄技術研究のプリンシパル・サイエンティストであるMertens氏(図5)が、先端半導体洗浄全般についてレビューした。「洗浄はいまやサブナノメーター・オーダーの超精密微細技術であり、それぞれのプロセスで最適な表面を提供するためには マイクロエレクトロニクス、化学、電気化学、物理、流体力学、精密機械工学などを総動員して学際的協力が必要である」ことを強調した。
次に、SiGe表面の洗浄とパッシベーっション(表面保護)について米アリゾナ大学のAnthony Muscat教授が講議した後、III-V族半導体表面の洗浄と表面準備についてimecのDennis van Dorp氏が講議した。今後、MOSデバイスの高速化のために、基板(チャネル領域)に、シリコンよりもキャリア移動度の大きいSiGeやIII-V族(InGaAsやInSbなど)材料が採用されるようになるため、それに備えるための講義だった。チュートリアルの最後には、imecのQuoc Tan Le氏による「BEOL相互配線工程の残渣除去と表面準備」に関する講義が行われた。
洗浄技術は、新しいデバイス構造や材料やプロセスを熟知しなければ最適化できない。その意味で、洗浄自術の研究動向を知ることにより、現在の半導体製造の問題点や次世代プロセス・デバイス技術の動向を把握できる。後日、改めてUCPSS2016で発表された論文のなかから、そのような主要論文を紹介しよう。