これらの目の疾患は中高年が比較的なりやすいため、その不便さを実体験している若年層は多くないだろう。そこで同イベントでは、こういった疾患を抱えた人が運転をする際の見え方を学べる「ドライブ体験コーナー」を設置。特殊な視覚障害体験ゴーグルを装着することで、実際にその疾患に陥った際の運転をドライブシミュレーターを通じて経験できた。
派手に自転車を轢いてしまう
選べる特殊ゴーグルは緑内障と白内障、加齢黄斑変性、そして糖尿病の代表的な合併症である「糖尿病網膜症」の4つ。アラサーである筆者は、最も直近でなりうる可能性が高そうな糖尿病網膜症のゴーグルをセレクトしてシミュレーターを体験してみた。
装着すると、視界の中央に大きな斑点が見え、視界全体がかすみ前が全く見えない状況に陥った。アクセルを踏んで出発しようとするが、そもそもアクセルも見えない。スタッフの人の「もう少し前です」といった誘導があり、やっとスタートすることができた。
運転中はなんとなく道路を走っていることはわかったが、道がどのようにうねっているのかがわからないため、左折も右折もできない。ただまっすぐ進むしかできない。スタッフの人の「そこを左折してください」との声があっても、きちんと道なりに左折できているのかがわからないのだ。
障害物も直前になってやっと認識でき、気づいたときには既にぶつかっていた。シミュレーターの画面が切り替わり、雨が降ってきてワイパーが左右に揺れるのが辛うじてわかる程度の視界。そんなレベルの見え方では、道を横切ってきた自転車に接触事故を起こしてしまうのも仕方なかった。こうも見えないものなのか……。
アプリで目の疾患を疑似体験
この特殊ゴーグルを用いなくても、目の疾患を疑似体験できる方法としてスマートフォンアプリ「ViaOpta Simulator」と「ViaOpta EyeLife」がある。前者は緑内障や白内障などの目の病気を持つ人にとって、普段の景色がどのように見えるかを確認できるもので、後者はVRビューワーを用いて「目の見えにくい生活」を体験できるものだ。
「ViaOpta Simulator」では、筆者がドライブ体験コーナーで経験した糖尿病網膜症と緑内障および白内障の3つの「視野」を見せてもらった。
糖尿病網膜症は全体にもやがかかったようで、中央に大きな斑点が浮かんでいるのがわかってもらえるだろう。緑内障は全体に視野が暗くなり、白内障は視野全体がにごり、中心部しかクリアに見えない感じだった。このアプリは症状の進行具合による見え方の違いも確認できるため、興味のある人はダウンロードしてみていはいかがだろうか。