自治体へのビジネスチャンスが広がる
先に述べたスマートアリーナの実現では、B.LEAGUEに参加するチームの拠点となる体育館の整備を行うことになる。体育館はチーム所有、チームの所在地の自治体所有など状況は異なるものの、日本全国に立地する。同社は日本の全都道府県に拠点を持ち、各自治体向けのビジネスを行っている。現地での対応が必要な体育館の整備を行う企業として、適したパートナーなのである。
しかも、体育館は地震、台風などの災害が起こった際には住民が避難する拠点ともなる場所で、「Wi-Fi導入といった整備を行うことは災害の際も有効」と会見の際、富士通側はアピールした。
体育館はバスケットボールチームの所有、自治体の所有など形態はそれぞれだというものの、災害時の避難拠点としての活用を想定するとなれば、所在地である自治体との協議が不可欠となる。
つまり、スマートアリーナの実現は、所在地である自治体との接点を増やすことにつながるのである。これはまさに「地域創生と共にスポーツ振興の実現」にかなったものであり、自治体向けビジネスの強化につながることとなるのではないか。元々、自治体向けITでは強い同社だが、その強い分野でビジネスを伸ばしていくきっかけにすることも可能なのだ。
工場作業における事故防止への糸口にも
技術面では3Dレーザーポインターを活用し、プレイ中の選手の動きを数値化する3Dセンシング技術は、「世界的に見てもトップクラス」と同社はアピールしている。
3Dセンシング技術は、先に述べたように人間の動きを数値が出来るため、より効率的な動きとはどんなものか、見直しを行う際や、事故防止などを考える際にも有効活用できるとしてすでに活用が進められている。そのため、これまでIT化されてこなかった工場での作業の動きなどを見直すことにも活用できると言われている。スポーツの世界での実績は、こうした工場など現場作業の改善を行う際の糸口として活用することも可能なのだ。
日本のバスケットボールで、女子はリオ五輪に出場し、好成績を残した。ところが男子チームは40年間五輪への出場機会がないという状況にある。今回、B.LEAGUE誕生、同社が提供した支援策によってチームが強化され、3Dセンシングによる選手の状況把握によって選手の強化、日本チームの強化が実現すれば、同社にとっては大きな成果となるだろう。
日本だけでなく、世界にアピールできる実績となる可能性もある。日本のバスケットボールが強化され、世界でもアピールできるような強豪チームへと成長していけば、富士通にとっても世界でのビジネスにつなげる大きな武器となるのではないだろうか。