新たに始めた「UberEATS」とは

そんなUberが9月30日に日本で新たに開始したのがフードデリバリーサービスの「UberEATS」。Uberのシステムを利用して、「人を移送する」以外のビジネス展開に乗り出したわけだ。配達員は登録制で、好きなときに働き、働いた分の報酬を受ける。Uberはレストラン、配達員、客をつなぎ、それを実現するためのシステムを提供するという立場だ。今回のビジネスに関しては、UberEATSは食のデリバリーサービスであり、人の移送ではないため、法的に問題がないということだろう。

食のデリバリーシステム「UberEats」

このUberEATSでは契約レストランの店内で提供するような料理を自動車もしくは自転車でデリバリーする。

客はUberと同じく、UberEATSの場合もスマホ、タブレットアプリで利用できる。客がアプリで料理を選択すると、Uberと契約したドライバー、ライダーが食品を運ぶ保温性を持つカーゴに料理を入れて注文者にデリバリーする。ちなみに当初は渋谷区および港区を中心としたエリア(渋谷・恵比寿、青山・赤坂、六本木、麻布)がサービス対象エリアとなり、他ではサービスを利用できない。

レストランと配達員は登録制。Uberは食をデリバリーするシステムを提供する役割

デリバリーサービスにもライバル

では、新サービスでUberは成功できるのだろうか。法規制に阻まれたUberだけに、新サービスへの期待も大きいだろうが、日本は宅配が盛んな国である。宅配サービスをまとめたドコモの「dデリバリー」、楽天市場の「楽天デリバリー」、FineDineなど様々だ。しかし、商品ラインナップを見ると、サービスごとに特徴がわかり、現状のライバルが鮮明になってくる。

dデリバリー、楽天デリバリーはデリバリーに向いたファストフード、弁当的なものを主に扱っている。これは商品自体はあまり高価ではないものが多いが、これに宅配料金が入ると割高感を感じないでもない。また、これらの商品は普通にレストランで出すようなものではなく、色合いが異なる。

これに対して、比較的有名な店のこだわりの料理をデリバリーしてくれるのが「FineDine」だ。ただし、利用可能エリアは、西は渋谷、新宿、高円寺、祖師谷から北は池袋、東は日本橋、銀座あたり、南は自由が丘という感じで、東京都の西側の一部に限られる。しかし、渋谷区および港区を中心としたエリア(渋谷・恵比寿、青山・赤坂、六本木、麻布)に限定されるUberEATSに比べれば、かなり広い。

店舗の関係でエリアによって、対応可能な店舗が変わるのはUberEATSもFineDineも同じだが、渋谷円山町あたりをターゲットに検索してみると、UberEATSのほうがバリエーションがある。クリスピードーナツなどスイーツも注文できるし、渋谷焼魚食堂のような選択肢があるなど、注文できる料理に幅があり、現時点では宅配料金が加算されない(当初は無料)のもいい。

現状のランナップを見る限り、UberEATSとダイレクトに競合しそうなのはFineDineのようなサービスだが、FineDineが有利なのは対応エリアの広さ、Uberが有利なのは料理のバリエーションの多さと現時点で宅配料金がかからないことだ。

宅配スピードはUberがデリバリーにかかる時間はテスト的に計測したところ、30分程度で、店と状況によっては8分程度でデリバリーされるなど、時間的には十分にスピーディそうで、戦闘力はありそうだ。FineDineはこれに対して、平均30~60分としている。ITに優れたUberの情報処理は速いが、それで得られるアドバンテージは実際のデリバリーは交通状況の問題もあるので大差ないとも考えられる。