現在利用中の家電を擬似的にAIoT化するホームアシスタント

ホームアシスタントを発表するシャープ 取締役 専務 兼 IoT通信事業本部長の長谷川祥典(はせがわよしすけ)氏

他社とのアライアンスの次にシャープが取り組むのが、ユーザーが現在利用している家電製品をAIoTの枠組みに組み込む施策だ。シャープの現行製品でさえ、まだまだIoT対応していないものが多く、それらは今後5年、10年と使われ続ける。そうした機器を通じて、ユーザーにAIoTへの理解を広げることで、対応製品の普及に弾みを付けようというわけだ。

テレビ、レコーダーはもちろん、エアコン、扇風機、空気清浄機、照明など、家庭内には赤外線リモコンで制御する家電製品が沢山ある。これらの家電や住設機器、サービスをユーザーと音声でつなごうというのが、今回発表した「ホームアシスタント」だ。

正式名称は未だなく、「ホームアシスタント」はカテゴリー名との認識。社内では「リンちゃん」のコードネームで呼ばれているという。ここでは便宜上「ホームアシスタント」で記事を続ける。

ホームアシスタントは、高さ130mm(突起物まで含めて138mm)の卵型デバイス。LEDで光る2つの目を持ち、ユーザーからの呼びかけに反応してグリーンやブルー、オレンジなどに光る。明らかに「目」をイメージしたデザインだが、カメラ機能は備えていない。ロボホンのように歩いたり手足を動かしたりはしないので、ロボットと呼ぶべきか悩ましいところだが、ユーザーと音声によるコミュニケーションが取れるという点では、コミュニケーションロボットの範疇に含めても良さそうだ。

ホームアシスタントは卵型で、上部に2つのLED(目)を搭載する。カラバリを用意するかなどは未定

Wi-FiでシャープのAIoTクラウドに接続し、AI機能はクラウド上で稼働する。このため、家庭内のWi-Fiがつながる場所に、ホームアシスタントを配置しておく必要がある。電源はACケーブルを利用する。会場ではデモンストレーション用にバッテリー駆動するモデルを用意していたが、家庭内で動かす必要性が低いため、実際の製品はバッテリーを搭載しない可能性も高いとのことだ。

ユーザーとの自然な対話や空気を読んでの提案、さらには伝言や気付きを与える会話もこなす

ホームアシスタントは赤外線リモコンの機能を備え、ユーザーの生活に合わせて家電をコントロールする。例えば、帰宅したユーザーが「暑い」といえば、「お帰りなさい、エアコンを付けますか?」と確認し、いつもより強めに冷やすといった融通を利かせながらエアコンの電源を入れたりする。

また、ユーザーとの自然な対話から機器をコントロールする糸口をつかみ、快適な生活をサポートする。ユーザーが「お休み」と声をかけると、「明日は何時に起きますか?」と返事が来て「6時かな?」と応じると、「朝6時までに、部屋を暖めて(涼しくて)おきますね。お休みなさい」と答えて、タイマーをセットするといった具合だ。

家族からの伝言を預かったり、伝えたり、あるいは出掛けるユーザーに「雨の天気予報が出ているので傘をお持ちください」と伝えて気付きを与えたりもできる。この、ユーザーに気付かせる働きかけは、注目したいポイント。ホームアシスタントが直接操作できない内容についても、ユーザーに適切な操作(作業)を促せることを意味する。

例えば、「今日は午後から雨なので、洗濯物は天日干しではなく内干しするか、乾燥機を利用しましょう」と伝えれば、リモコンに対応しない洗濯機の適切な利用をサポートできることになる。

家電など、他の機器と連携するユーザーインタフェースという意味では、シャープには既にロボホンがある。その棲み分けが気になるところだが、ロボホンは個人が持ち歩くもので、ユーザーにITリテラシーも必要になる一方、ホームアシスタントは自宅に据え置きしてITリテラシーもほぼ不要という点が違う。家庭にWi-Fi環境が必要なので、ITリテラシーが皆無な一家でも導入できるとはいかないかもしれないが、誰か一人分かる人間がいれば大丈夫だろう。

ずいぶんと生活を便利にしてくれそうだが、もちろん課題もある。シャープが現在課題として検討しているのは「どう家電にするか」の部分だという。新しいカテゴリーの商品と呼ぶだけあって、確かに家電っぽくないともいえるし、購入したいと思ったユーザーが、家電量販店のどこの売り場に行けば取り扱っているのか、ここという正解がぱっと思い付かない。販売方法も売り切り型にするのか、ロボホンのような月額課金型にするのか、未だ検討中とのことだ。