音楽産業の健全な発展に寄与
この後に登壇したスポティファイ ディレクターオブプロダクトのデイブ・プライス氏は、プレイリストやシャッフルプレイの使い方、検索バーを使ったアーティストの検索方法などをデモを交えて紹介。Spotifyの特徴を「聞けば聞くほど、オススメの音楽を把握していく」と説明した。続いてスポティファイジャパン ライセンス&レーベルリレーションズディレクターの野本晶氏が登壇。日本の音楽市場の現状について、野本氏は「有料サブスクリプションサービスの成長によって、デジタル配信における収入が伸びている。Spotifyではこの先の数年で、これをさらに伸ばしていきたい。音楽産業の健全な発展に寄与できると約束する」と話した。
野本氏は「デジタル配信がレコード産業の収益の45%まで上昇している。世界60カ国で展開するSpotifyでは、レーベルやアーティストなど音楽業界に累計5,000億円を還元できる」と説明する。スポティファイジャパンでは今後、アーティストと1億人のユーザーを結びつけ、新しい音楽やアーティストとユーザーの出会いの場を提供し、音楽産業における新たな収益源を確立していく方針だという。
日本の音楽文化を世界に
最後に、スポティファイジャパン代表取締役社長(就任予定)の玉木一郎氏が登壇。玉木氏は、3つの公約を果たすと約束した。まずは「日本の音楽ファンを世界中のアーティストと結びつける。楽しいとき、悲しいとき、嬉しいときに、その気持ちに沿った音楽を配信していく」。次に「日本で活躍する音楽の才能あふれるアーティストの楽曲を世界中に届けることで、日本の音楽業界に貢献し、ひいては日本の音楽文化を世界に伝えていく役割を果たす」。最後に「音楽をいつでもどこでも楽しめるSpotifyのサービスを実現するため、あらゆるパートナー企業と一緒になってサービスに適した環境をつくっていきたい」と力を込めた。
他社サービスとの差別化は?
説明会の終了後、スポティファイジャパンのハネス・グレー氏、および野本晶氏が囲み取材に応じた。目標とする収益の規模について聞かれたハネス氏は「まだ将来的な数字を口にするのは時期尚早だと考えている」と回答。日本市場はアメリカに次ぎ2番目に大きな音楽産業規模で、「今回のローンチをきっかけに、まずは日本での足場を確実なものにしていきたい」と説明した。
今後の参加が見込まれている邦人アーティストについて聞かれると、野本氏は「音楽ストリーミングサービスに参加するかどうか、まだ決断できていないアーティストをこれから口説いていければ」とコメント。
Apple、Google、LINEなど競合他社はすでに音楽配信サービスを本格化させている。これについて聞かれると、ハネス氏は「ほんの2年前にはスタートしていなかったプレイヤーが次々に参画している。ただ、私たちは無料プランと有料プランを用意しており、その点で他社サービスと差別化できているのではないか」との考えを示した。無料プラン利用者の広告収入と、有料プラン利用者からの収益の割合については「比率では見ていない。1億人の利用者のうち4,000万人が有料会員だとしか申し上げられない」(ハネス氏)。
日本の音楽シーンはドイツと似てる?
日本の音楽について聞かれると、ハネス氏は「様々なジャンルがあり多様。Spotifyではジャンルの境目をなくして、広範囲にわたる音楽セレクションの中から、ミックスしたプレイリストを提供していく」と回答。野本氏は「世界では毎日2万曲の楽曲が追加されている。日本のアーティストの楽曲も積極的に追加していきたい」と話した。
日本市場のユニークな点について聞かれると、ハネス氏は「全部は言い尽くせないほどユニークな特徴が多い。ひとつ言えるのはドイツにおける市場と似ているということ。ドイツでは売上の主流がCDだったが、CDの売上が減った。しかし現在、その減少分をデジタル配信による売上で相殺している。これにより音楽業界がスムーズに移行しつつある。日本市場も、そうした方向に向かうのではないか」との見方を示した。