ところでこうした現場で広く利用されるのがPLC(Programmable Logic Controller)である。PLCそのものは広く機器の制御に使われるものであるが、Industry 4.0ではまた別の役割もあると氏は指摘する。氏の解釈ではIndustry 4.0はすべてがインテリジェント、別の言い方をすれば末端のセンサまでがすべて個別のIPを持った形でネットワークに繋がる構図になるが、現実問題としてセンサとかアクチュエータがすべて独自のIPを持つ状況にはまだ遠い。そこで、PLCがその代わりをするという訳だ(Photo07)。ただそのPLCに繋がるセンサも、ここ50年ほどで100分の1まで小型化しており(Photo08)、これにあわせてPLCの方も急速に小型化しつつある(Photo09)。

Photo07:上位の機器はもちろんネットワークに繋がるが、フィールドデバイスはまだノンインテリジェンスなものも少なくない。これをインテリジェンス化する、一種のゲートウェイとしてPLCが使われる、という考え方である

Photo08:これは独SICKの提供するレンジセンサを取り上げたもの

Photo09:昔は中央管理形のPLCだったが、その後どんどん小型化すると共に分散処理式にかわってきているのがここでもわかる

ということでいよいよ本題である。今回同社が提供を開始するのは、Pocket IOと呼ばれる新しいPLCのリファレンスデザイン(Photo10)である。元々同社は2014年9月に、Micro PLCのリファレンスデザインを発表しており、Pocket IOはMicro PLCの第2世代目ということになる。誤解を招かないように書いておけば、これはあくまでユーザー(この場合で言えば、国内外のPLCメーカー)が自社でPLCを開発するためのリファレンスであって、Maxim自身がこれをPLCとして販売するつもりはまったく無いという。

Photo10:I/Oチャネルの数は初代Micro PLCと比較して20%多いとする

実際にリファレンスとしてMaxim自身が提供する要素は産業用電源、デジタルアイソレータ、デジタルI/O、IO-Link、モータドライバ/エンコーダといった要素になる。まずデジタルI/Oでは、8回路のハイサイドスイッチとして「MAX14913」(Photo12)を、IO-Link I/Fとしては「MAX14827」(Photo13)を、デジタルアイソレータとしては「MAX12931」(Photo14)を、そして電源としては「MAX17503/MAXM17503」(Photo15)を提供するという具合だ。こうしたものを組み合わせることで、2014年には7枚の基板を組み合わせて提供された第1世代Micro PLCを上回る機能を、わずか2枚の基板で実現できた、というのが今回の骨子である(Photo16)。

Photo11:これはCGであるが、ボード左上にあるモジュールがプロセッサである。中身は後で

Photo12:チップそのものはやや大きくなったが、外部のダイオードが不要になった分実装面積は大幅に減った

Photo13:厳密に言えばMAX14826とMAX14827では微妙に仕様は異なるが、IO-Link Transceiverとして使う分にはほぼ同じで、省パッケージ化と省電力化が実現されている

Photo14:MAX12931はキャパシタベースのアイソレータ。光アイソレータだと、10年を超えるとLEDの出力が劣化することによる寿命が来てしまうが、キャパシタ方式だともっと寿命が長いのが特徴だとする

Photo15:左が従来の回路、中央がMAX17503+外付け部品の構成、右が外付け部品をモジュール化したMAXM17503を使った例である

Photo16:ボード面積そのもので言えば今回のPocket IOの方がやや大きいのだが、何しろ枚数が圧倒的に違う。ただ、厳密に言えば例えばEthernetを繋ぐRJ58コネクタが省かれているとかの違いがあるので、実際にあれこれ繋ごうとするともう少し体積の差は縮まるかもしれない

余談ながら、11月にドイツで開催されるElectronica 2016の会場では、このPocket IOを利用したサッカーボールの検査システムのデモが行われる事になっているとする。