――「自分のニオイは自分では気づけない」といいますが、本当でしょうか?

自分のニオイや自分の家のニオイなど、体臭を含めた自分の生活環境下にあるニオイに慣れてしまうと、自分のニオイに関してはなかなか気がつきにくいといえます。要するに、嗅覚が慣れてしまうんですね。

なかなか気が付きにくい自分の体臭に対し、セルフチェックできる方法があります。まず、シャワーを浴びます(もし洗浄料を使用するのであれば、無臭の石けんを用いてください)。そのあと、シャワーの前に脱いだ衣類のニオイを嗅いでみてください。シャワーを浴びると体のニオイも落とされ、嗅覚もリセットされた状態に近づくので、普段の生活の中で自分の衣類を嗅いだときより、より客観的に自分自身の体臭をチェックすることができます。また、枕やパジャマなどでセルフチェックを行うと、自分の体臭がよりよくわかるでしょう。

ただし、あまり気にしすぎるのもストレスになってよくありません。体臭のセルフチェックはご自身が快適に日常生活を送る知恵の一つとして、上手に生かしてくださいね。

――「自分が臭っている気がする」という思い込みもありますか?

思い込みの方もいらっしゃいますね。実際には臭くないのに"自分は臭い"と心配したり思い込んだりと、心の病気である「自臭症」を引き起こしてしまう方もいらっしゃいます。

自臭症とは「自分は臭い(幻臭)、あるいは自分は人から臭いと思われているのではないか」と妄想する、強迫観念・恐怖症に似た心の病気の一種です。自臭症の人は、口臭やワキや足のニオイなど自分の体から発するニオイが強いのではないか、他人に不快に思われているのではないか、と気になって強いストレスを感じてしまいます。

皮膚科にもそれほど多くはありませんが、そういった方が受診されることがあります。しかし、自臭症の患者さんご本人は、ご自分のニオイが幻臭ではないと思っているので、「心療内科や精神科の受診は必要ない」とおっしゃるケースがほとんどです。

口臭に関しては、最近では口臭外来を開設している歯科もありますので、そういったところの受診もおすすめしています。

――ワキガ・チチガ・スソガの場合、どのような治療が行われるのでしょうか? おすすめのセルフケアがあったら教えてください。

ワキガ・チチガ・スソガは、アポクリン汗腺が存在する腋か(ワキ)・乳輪部・外陰部からのアポクリン汗のニオイが特に強いものをいいます。アポクリン汗腺は思春期に発育し、性活動が盛んに行われている間は働いていますが、更年期になると次第に萎縮してきます。

アポクリン汗腺が存在する部位(耳・外耳道、腋か、乳輪、へそ、外陰部)はくすぐったく感じる場所で、いわゆる性感帯と呼ばれるところに一致しています。アポクリン汗腺が性活動に関連しているといわれているのはそのためです。

ワキガの治療では、手術が選択されることもありますが、高周波や電磁波などの機器で汗腺を壊し、治療するという機械による方法もあります。また、年齢を重ねると症状も軽くなっていく傾向にありますので、無理に治療せず、食生活などを意識・改善し、上手に付き合っていくのも方法のひとつです。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 中村仁美(ナカムラ・ヒトミ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。