FeliCaの採用はグローバル化があってこそ

しかしなぜ、アップルはFeliCaを搭載してまで、Apple Payの日本進出を図ろうとしたのだろうか。大きな理由はNFC自体の動向にあると見られている。

先にも触れた通り、従来日本以外では、スマートフォンにNFC-A/Bのみを採用していた。しかしながらJR東日本がNFCの国際団体であるNFC Forumに対し、モバイルによる公共交通系決済の対応でFeliCaも採用するよう粘り強く説得したことから、来年以降公共交通の決済に対応するスマートフォンには、NFC-A/BだけでなくFeliCaも搭載されるようになった。

iPhone 7/7 PlusにFeliCaが搭載されたのは、Suicaを有するJR東日本による、標準化団体などへの働きかけが大きく影響しているようだ

今回のiPhoneのFeliCa対応も、そうしたNFCの動向の変化が大きく影響しているものと考えられる。なぜならアップルは、世界で単一のモデルを大量に販売することで、高い収益を確保していることから、ローカル市場への対応によるコスト増加は可能な限り避けたいからだ。

とはいえ、今回FeliCaに対応するのは日本市場専用モデルのみとなっている。だが先の理由から、低コストでFeliCaを搭載できる道筋は既についており、将来的なコスト削減も明確にされている。それゆえ搭載を1年待つよりも、現在のタイミングで導入を図るのが最適とと判断したといえそうだ。

実はアップルは、こうした技術の普及タイミングの見極めが上手い会社でもある。先に触れた通り、Apple Payはサービスを開始したのは2014年だが、なぜこのタイミングでサービスを開始したのかといえば、それ以前よりクレジットカード会社がNFCによる非接触決済の導入を進めており、特に米国で、POSの入れ替えなどによってNFC対応のリーダーがある程度普及したタイミングであったからだとも言われている。