キヤノン「EOS M5」は、同社のミラーレスカメラ「EOS M」シリーズの最上位モデルだ。2015年に発売された「EOS M3」の基本コンセプトを受け継ぎながら、AFや連写の高速化、EVFの内蔵、撮影機能の強化などを図っている。発売は11月下旬。今回は、既存モデルEOS M3と比較しながら、EOS M5試作機によるファーストインプレッションをお伝えしよう。
「デュアルピクセルCMOS AF」の効果は抜群だ
EOS M5を試用してまず感じたのは、AFが快適になったこと。シーンの明るさや動きの有無に関係なく、さくさくと気持よくピントが合う。これは、一眼レフ「EOS 80D」などのライブビューAF用にも使われている「デュアルピクセルCMOS AF」を搭載したおかげだ。1つ1つの画素を独立した2つのフォトダイオードで構成し、全画素の情報を位相差AFに利用する仕組みである。
キット付属の標準ズームレンズ「EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM」の使用時はもちろん、広角ズームやマクロレンズ、さらには特にAFの遅さが弱点だった単焦点レンズ「EF-M22mm F2 STM」、アダプター経由で装着したEFレンズのいずれの場合でも、軽快に作動するAF性能を体感できた。
これまでのEOS Mシリーズを振り返ると、2012年の初代「EOS M」でハイブリッドCMOS AFを、2013年の2代目「EOS M2」でハイブリッドCMOS AF IIを、2015年の3代目「EOS M3」でハイブリッドCMOS AF IIIを搭載し、そのたびにAFは少しずつスピードアップしてきた。
ただ、それでもミラーレスの分野で先行する他社製品に比べると、EOS M3のAF速度にはもの足りなさがあった。その点、今回のEOS M5ではデュアルピクセルCMOS AFの採用によって問題を克服。他社製品に勝るとも劣らないAF速度に達したといえる。
新機能として「奥行きAF」をサポートしたことも見逃せない。これは、縦横という二次元の動きの追尾に加え、前後方向へと移動する被写体に対して、被写体の動作と速度を元にして予測的なAFを行う仕掛け。動体に対して連続的にピントを合わせる「サーボAF」がいっそう実用的になった。
AF方式は、「1点AF」と「顔認識+追尾優先AF」に加え、「スムーズゾーンAF」が利用可能になった |
これまでやや大きめだったAFフレームサイズは「標準」と「小」の2サイズから選択可能になった。細部にピントを合わせやすくなる |
さらに、撮影直後の処理レスポンスも高速化した。EOS M3では一般的なミラーレスカメラと同じように撮影直後にアフタービューが表示されるが、シャッターボタンを半押してしてもその表示をキャンセルできず、すぐに次のシャッターを切れないことが大きなストレスだった。そのため個人的には仕方なく、アフタービューをオフにして使っていたが、それでも引っかかる感じが残り、ポートレートなどタイミング重視の撮影には不便を覚えていた。
EOS M5では、その点もしっかり改善されていた。アフタービューの表示中でもシャッターボタンを半押しすることで表示を即座にキャンセルでき、素早く次の撮影に移行できるようになっていた。また、アフタービューをオフにした場合のレスポンスも向上している。
連写性能も進化しており、AF固定で最高9コマ/秒、AF追従で最高7コマ/秒の高速連写が行える。