展示会で提供するのは“深い体験”
6階フロアに設置した「hmv museum」は、音楽、映画、アートなどを中心に、様々なコンテンツの展示会を実施していくスペースだ。展示会は有料イベントだが、店舗側の狙いとしては、入場料で稼ぐことよりも、より深い体験を顧客に提供したり、展示会を通じて情報を発信したりする方に重きを置いているようだ。展示内容は1カ月程度で変わっていく。
約40坪のhmv museumは、売り場面積を削って設置したものだが、これにより品揃えに影響は出ないのだろうか。このスペースはもともと、「科学」をテーマにした売り場だったらしいが、置いてあった商材は、別の売り場に移設するなどの対応により、実際はほとんど減っていないらしい。アートやファッションの売り場を拡充したことで、同店の在庫総数は、レイアウト変更後も以前と同程度の42万点規模をキープするという。
ネットショッピングと勝負するため、強化すべき特性とは
品揃えではネットショッピングに敵わないという状況において、リアル店舗は何に注力すべきか。HMV&BOOKS TOKYOが挑んでいるのは、現代の小売店が直面せざるを得ない難しい課題だ。同店が取り組んでいるのは、店舗の個性を打ち出すことと、来店者に体験を通じた購買行動を促すこと。個性は売り場作りに反映させ、体験の部分はインストアイベントや展示会などで追求していく。
出会いと発見の場としてのリアル店舗を運営していても、実際に顧客の購買活動に結びつくかは未知数だ。HMV&BOOKS TOKYOで情報収集した来店客が、欲しい物をネットで買う、いわゆる「ショールーミング」に流れる可能性も無視できない。実際に店に来てもらい、様々なカルチャーに触れてもらうことに成功したら、次に取り組むべきは、いかに体験を購買活動に結びつけるかという課題だ。そういう意味で、インストアイベントや展示会に注力し、熱量の高い来場者に対して関連グッズを売り込むという同店の手法は効果的かもしれない。