2015年11月、丸井グループが渋谷の公園通り入口にオープンさせた商業施設「渋谷モディ」。“知的商業空間”をコンセプトに掲げ、30~40代の女性をメインターゲットに据えたマルイの進化型施設だが、ふたを開けてみると、客層で目立ったのは20代女性だった。モディのコンセプトを“核テナント”として支える「HMV&BOOKS TOKYO」は、当初想定とは少し違った客層に訴求すべく、様々な施策を盛り込んだ店舗改装を実施した。
マルイはなぜ、大人の女性を狙ったのか
そもそもマルイといえば、客層としては若者が多い印象だが、渋谷モディが大人の女性をメインターゲットに据えたのはなぜか。その背景には、渋谷で若者文化が盛り上がりを見せていた1980~90年代を知る女性達に、改めて渋谷に足を運んでもらいたいという想いがあったようだ。当時10代後半から20代前半だった女性は今、渋谷モディがメインターゲットに据える年齢層に差し掛かっている。
そんな渋谷モディを象徴するのが、5~7階の3フロアで展開するHMV&BOOKS TOKYOだ。CDショップとしてのイメージが強いHMVだが、モディの店舗で扱うのは「書籍」、「CD・DVD」、「雑貨・グッズ」と多岐にわたる。“雑誌”をイメージした店内では、売り場担当者は編集者さながらにテーマを設定し、そのテーマに紐付く商品を集める。例えば「料理」をテーマにした売り場では、料理本を核に据えつつ、料理をテーマにした映画、食材、調理器具などを並べるといった具合だ。
レイアウト変更で20代女性客に訴求
昨年11月のオープン以来、HMV&BOOKS TOKYOの売上は、ほぼ計画通りの水準で推移しているらしい。想定と少し違ったのは客層だ。若い女性に訴求すべく、同店では売り場のレイアウトを見直す。ボリュームを増やすのは、「アート」、「カルチャー」、「コミック」といった分野。新たに設けるのは「ファッション」のコーナーだ。
HMV&BOOKS TOKYOの改装は、単に想定していた顧客像と実際の客層のギャップを埋めるためだけの施策ではない。ネットショッピングには真似のできない、“出会いと発見”の場としてのリアル店舗の特性を強化するため、今回のレイアウト変更では6階のイベントスペースを拡張するほか、新たに常設のミュージアムを設置する。