誰をターゲットにしているか
それでは、LINEモバイルはブレークできるのだろうか。この当たりを探ると、まだ何とも言えない……ことが見えてくる。
LINEはMVNO参入の意義について、フィーチャーフォンユーザーが多数いることを挙げている。日本国内のスマートフォン普及率はMM総研調査では56.9%(2015年9月末時点)であり、まだ4割強も取りこぼしている層がいると強調する。スマートフォン利用に関する不満として、「月額通信料が高すぎる」「自分に合ったプランがない」「データ通信量制限に毎月悩まされる」といった要因をLINEは挙げ、これらすべてを解消するサービスとしてLINEモバイルを提供したい意向だ。
確かに大手通信会社の料金体系と比べればLINEモバイルは圧倒的に安い。コミュニケーションフリーにより、データ通信量の制限の悩みを緩和するプランも用意した。
しかし、他のMVNOと比較すると格段に安いというわけでもない。他のMVNOでも、特定のアプリに関しての利用無制限を謳うプランを提供するところもある。そうした環境下にありながら、かつ、格安SIM、格安スマホという言葉が広まっても、まだ利用者が全体の数%にとどまっているのはなぜか。それを考える必要があるだろう。
それは販路と開通までの手続き、顧客対応が必要だからだ。料金が安くとも、すぐに使えないのは大きな障壁だ。LINEモバイルの販路は当面、ウェブに限定される。SIMの契約では早ければ翌日にはユーザーの手元に届き、MNPの場合はSIM到着後の即日開通もカスタマーサポートへの連絡により可能だというが、移行完了に日数がかかったり、少しでもユーザーに負担が生じるようなシステムでは、やはり不十分といえる。
他のMVNOでは即日開通を実現したり、ユーザーの不安を対面で聞き取りるために、家電量販店やアンテナショップでの顧客対応を進めてきた経緯があるからだ。
こうして考えると、LINEモバイルにはやるべき課題がたくさん残されている。もちろん、LINEがこれらを課題として認識していないわけではない。家電量販店での対応などを含め検討を進めている。だからこそ、今回の発表会では、自身のサービスを「LINEモバイル 1.0」という言葉を用いて表現している。
認知度の高さを武器に、当初からブレークしてしまう可能性は否定できないが、次なる進化に向けて、顧客対応、サービスの拡充などが求められそうだ。いうなれば、未完の大器、それが現段階におけるLINEモバイルになるだろう。