スーパーセルのもう一つの脅威は雷。温暖化で将来、現在の1・5倍の確率で雷が落ちることになるとも報告されており、実際に日本でも同時多発的に都市部で雷が起きるケースが増えている。中には、4時間で3,000回も確認されたという地域も。雷が増えて今後、同じ建物に何度も落ちるようならば、避雷針で防ぎきれなくなることも考えられると指摘されている。
スーパーセルと雷の組み合わせは、私たちのインフラを破壊するだけではなく、ビジネスにおける生命線にも悪影響を及ぼす可能性がある。その存在とは、パソコンなどの電子機器だ。
雷が落ちると、その周りに強い電磁波が発生。周囲の電気ケーブルに異常な電流が流れる。この電流は「雷サージ」と呼ばれているが、雷サージがデータが保存されているサーバーを破壊、電子機器を使用不能にさせるというのだ。
万一、「雷サージクラッシュ」が病院で発生した場合、モニターやナースコールなどが使用できないケースも想定され、雷が間接的に人の命を奪うことにつながりかねないというわけだ。
大自然に科学で挑む人間たち
ただ、大自然の脅威を前に、科学の力をもってして立ち向かおうとしている人たちもいる。その一例が、理化学研究所の三好建正氏を中心とした国際プロジェクトチームだ。ピンポイントな予測を用いて、巨大な積乱雲の発生を事前に察知することで防災につなげようと日々励んでいる。
現在の天気予報は1時間に1回、2km四方のエリアごとで行い、そのエリアごとで雨や晴れといった具合に予測する。だが、初期の段階の積乱雲はこの2km四方の中で急速に発達するため、現時点では予測が難しいとされている。
そこで三好氏は、100m四方の小さな範囲におけるより短い間隔での観測に挑戦している。雲の状態を詳細に調べるため、フェーズドアレイレーダーと呼ばれるレーダーを用い、雲全体の様子を一度に把握。詳細な雲データを基に、数十分後にどのように変化するかを計算している。
この手法によって、積乱雲発達前から豪雨を予測できる可能性が出てくる。10年後の実用化を目指している三好氏は、「進んできている温暖化に適応していくことも非常に重要です。局地的な豪雨が起こりやすくなっていることを考えますと、防災のあり方を大きく変えるきっかけになるのでは」と話した。
いかにして「自分ごと」と認識するか
私たちの日常に、既に台風や局地的豪雨という形で影響を及ぼしつつある地球温暖化。CGや実際の映像でその脅威を目の当たりにしたことで、放映後には「テロよりもこっちの方が恐ろしい」「NHKスペシャルの予測がすさまじい」「現実なのこれ? という感じ」といった視聴者からの恐怖の声がインターネット上に数多く見られた。
一方で、「環境問題に対する認識が低すぎる。もっと資源を大切にしないと」「私たちは本当に待ったなしの状況にいる」などのように、既に温暖化が進んでいる現状を再認識し、その状況を変えていくことの必要性を訴えている意見も多かった。
ともすれば、「地球温暖化」というフレーズは普段の生活から実感しにくく、その影響が及ぶとしても、自分が存在しない数十年後、数百年後というイメージがつきまとうため、「自分には関係ない」と考える人も少なくないだろう。
ただ、実際問題として地球の"破綻"は既に始まっており、危機は今すぐそこにあるのが現実だと言えるだろう。自宅で省エネにするなど、個人レベルで今日から実践できる温暖化対策は少なくない。自分が生きている間、もしくは自分の子が生きている時代にこの「メガクライシス(巨大危機)」がやってくるとしたら、私たちの日常の行動は変革するのだろうか。
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