RSウイルスの認知度の低さの原因とは

ウイルスとしてはインフルエンザと同程度の印象でありながら、なぜこれほどまでに認知度が低いのだろうか。全国の1,800人を対象に行ったオンラインアンケートによると、RSウイルスがどのような病気か知っている人は43.3%にとどまり、半数以上の人が知らないという結果だった。インフルエンザ(97.6%)、水ぼうそう(87.2%)などに比べると非常に低いことについて、堀越氏は効く薬がないことを理由に挙げる。

インフルエンザなどに比べ、RSウイルスの認知度は低い

「RSウイルスには抗菌薬、いわゆる抗生物質は効かず、有効な抗ウイルス薬がありません。重症化した場合も、呼吸を助ける治療を行って自然回復を待ちます。RSウイルス感染症は対症療法で対応するしかなく、重症化するまでは多少の症状があっても、検査でRSウイルスと確定させるメリットが少ない。インフルエンザのように予防接種もありません。そのため、これまで認知が広がっていかないと考えられます」。

もしRSウイルスに感染し、入院してしまった場合の家族の負担は大きい。乳幼児の入院の場合、親や家族などの付き添いが必須となる場合がほとんどとなるため、仕事を休まざるを得ない。RSウイルスの症状が出てから入院するまでに2.9日、入院期間は6.7日、退院後も症状がなくなるまでには9.9日ほど平均でかかってしまう。

「親御さんの中には『退院させると仕事を休めなくなるため、入院させておいてくれ』とお話しされる方もいます。ですが、医療機関としては入院治療の必要のない方を受け入れたままにはできません。RSウイルスが認知されていないため、職場などの理解も得られにくいのが現状です。社会としての受け入れ体制が必要だと考えています」。

RSウイルス感染症での入院体験談

堀越氏に続き、実際に子供がRSウイルス感染症で入院した女性の体験談も語られた。その女性の場合、3人の子がRSウイルスに感染し、一番下の子が入院してしまったという。

「3人一緒の症状でしたが、下の子の呼吸があまりに苦しそうで、離乳食なども受け入れない状態になってしまったので入院になりました。RSウイルスの名前は知っていましたが、想像以上に重症化するのでイメージが変わりましたね。最初の検査では分からなかったのですが、変だなと思ったらすぐ病院に行くことが大切だと思いました」。

女性は「入院させてしまったという後悔の気持ちが残っている」と話すが、堀越氏は「感染は避けられない」と指摘する。

「後悔されるお母さまは多いですが、RSウイルスの感染は避けられません。症状も普通の風邪とほぼ一緒なので見わけもつかない。予防する手だてもないのが現状です」。

では、感染を可能な限り防ぐにはどのようにすればよいだろうか。最も有効なのは手洗いだ。うがいについては効果が証明されていないが、予防策としてよく実践されている。また、マスクでせきをしている人がウイルスをまき散らさないことも重要だ。

重症化した場合、深刻な事態にもなり得るRSウイルス感染症。誰もがかかる可能性があるからこそ、より広く認知させていかなければならないのではないだろうか。