ドコモで生保は売れるのか
とはいえ、本当に生命保険が売れるのか、という疑問も残る。ドコモショップへは、携帯電話料金の見直しをしたい、端末を買い換えたい、から行くわけで、わざわざ、生命保険を目当てにドコモショップに行くことはないだろう。ニーズはどこにあるのだろうか。
NTTドコモ 保険ビジネス担当部長の寛司久人氏は、「ドコモショップはこれまで、顧客のライフステージに寄り添って営業してきた面がある。ドコモショップに来る人は結婚して、名義が変わるといった人も多い。そうしたタイミングで保険を替えたり、見直したりするニーズがあると思う」と話す。しかし、誘客がうまくいかなければ、生保の販売はうまくいきそうにない。契約にこぎつけるまでのドコモショップなりのメリットもほしいところだ。
誘客施策は、駅前でのティッシュ配りや店内でのマネー関連のセミナーの開催などを想定しており、非常に地道なものになるという。そして経済メリットも特にない。保険と携帯電話のセット契約による割引も考えられそうだが、保険業法の観点から実施はせず、先々もその予定はないという。あるのは、通信料の見直しついでに保険の見直しも行えるといった利便性の向上のみだ。
ドコモらしさをどれだけ出せるか
生命保険の販売は、うまくはまればドコモにとって有意義な事業となりそうだが、現状を見る限り、何ともいえない。それを見越してか、関東甲信越の11店舗でのスモールスタートになる。年度内には40店舗まで増やしたいと話すが、それでも数は少ない。年度内までの取り組みは、生保販売の親和性を探るというテスト的な側面が強いように感じられてしまう。
ただし、先々を見たときに、生命保険の販売は面白い取り組みになりそうだ。同社は今後、生命保険にドコモのアセットを活用していくとしている。ドコモヘルスケア、らでぃっしゅぼーや、ABC Cooking Studioといった事業資産を活用し、「健康な活動をすればするほど保険料が安くなる商品の提供」なども考えているという。深読みすれば、歩数や消費カロリー、睡眠を計測する「ムーブバンド」などを活用して、保険料金に反映させる仕組みを考えているようにも思える。
こうして見ると、第一幕となる生命保険の販売はドコモショップに従来のビジネスを取り入れただけのものとなり、事業資産を生かした第二幕からが本番になりそうだ。通信会社としてのドコモらしさをどれだけ出していけるか。そこに期待がかかりそうだ。