NTTドコモは9月1日よりドコモショップで保険の代理販売を開始した。これまでも損害保険を携帯電話を通じて販売してきたが、今回は、ドコモショップでの対面販売を行い、生命保険も取扱う。なぜ、携帯電話会社が保険に注力するのか。
生保販売に力を入れるドコモ
ドコモが保険の取扱いを開始したのは2010年。1日自動車保険や国内・海外旅行保険など、携帯電話を通じて加入できる損害保険「ワンタイム保険」を販売してきた。携帯電話から加入できる手軽さが受け、今でも存続しているサービスだ。
そして、ドコモショップを通じて9月1日からは、関東甲信越のドコモショップ11店舗で新たに生命保険の代理販売も開始した。各店舗には、概ね2つの保険相談の専用カウンターが設けられ、3カ月みっちりと訓練を受け、資格を得たドコモショップの店員が保険相談を行う。生命保険という商材の特質上、顧客からの信頼を得なければ申し込みにつながらず、従来のようにウェブからではなく、対面での販売が必須とのことで、ドコモショップという資産を活用して、生命保険を販売していこうというわけだ。
ドコモショップのスタッフを有資格者になるまで育て上げ、貴重な販売スペースを保険販売に割くほどの力の入れようだが、そもそも、ここまでする必要あるのだろうか。ドコモは保険屋ではなく、通信会社だ。そこを理解するには、ドコモの保険参入の意義に耳を傾けつつ、同社を取り巻く環境に照らし合わせて考える必要があるだろう。
保険参入の意義
保険参入の意義について、ドコモは「健康で豊かな社会の実現を目指し、お客様と長く・深い関係性を築くこと」とする。麗しい言葉が並ぶが、重要なのは「お客様と長く・深い関係性を築くこと」の部分だ。
次に、ドコモを取り巻く事業環境についてだ。ドコモをはじめとした大手通信キャリアには今も、逆風が吹いている。総務省は携帯電話利用者の料金負担の低減を目的に、MVNOへの移行を促しており、大手通信キャリアはその大きな流れには逆らうことができない。実質ゼロ円でのスマートフォンの販売も禁じられた今、他のキャリアからの顧客の奪い合いもなくなってしまった。
できることと言えば、長期利用者の優遇策を打ち出し、少しでも長くドコモを使ってもらえるようにすることだ。そのため、ドコモは今年に入って長期利用者を優遇する施策を打ち出している。少しでも長くドコモと関わってもらうには、生命保険のように契約期間が長期に渡り、顧客と深い関係性が求められる商品は都合がいい。生命保険の対面販売を行うことで、顧客との新たな接点を持てるようになるわけだ。