Appleは、米国を皮切りに、英国、カナダ、オーストラリア、中国、シンガポール、スイスなどの国々で、iPhoneに内蔵されたNFCチップによるクレジットカード・デビットカード決済の仕組み「Apple Pay」を導入している。最新の数字では、世界で300万カ所での利用が可能となっており、収益の半分が米国以外の国々からもたらされている。
Apple Payは、iPhoneで数少ない「日本では使えない機能」の1つだ。米国・サンフランシスコ周辺でも、まだまだ利用できる店舗が身近には少ないというのが実感するところだが、デバイスのサポート、金融機関のサポート以上に、店舗のサポートに時間がかかる領域だ。
日本では、既にFeliCaをベースとした非接触IC決済が普及しており、複数の電子マネーが、コンビニから交通機関まで、幅広く利用できる。特に、交通系のICはとにかく処理が速い。日本の改札向けに想定しているのは、1分間に60人が通過できるようにする速度だ。これは欧米の仕様の倍のスピードとなる。
駅では「1秒タッチ」などとしっかりタッチするよう促しているが、実は、秒速1mの歩行速度に合わせて、0.2秒で処理でき、またリーダーとカードの距離も85mmと長い。
Apple PayではNFCの通信と指紋認証を組み合わせており、Touch IDの高速化が施されたiPhone 6sでは半分ほどに時間が短縮されたが、それでも決済には1秒~2秒がかかる。これをそのままの仕様で、例えば東京の新宿駅に持ち込んだら、少なからず混乱が生じることになるはずだ。
ただ、2020年に東京でオリンピックが開催されることもあり、Apple Payに限らず、Android PayやSamsung Payといったモバイル決済サービスがそのまま使えるようになれば、利便性はより高まる。
NFCの仕様を策定しているNFC Forumでは、JR東日本の主張が受け入れられ、0.2秒で処理する日本仕様のNFC type Fが、規格に組み込まれた。そのため、グローバルでNFCをサポートするスマートフォンでも、日本のモバイルSuicaを利用することができる可能性が開けた。
ただ、iPhone 7が、NFC type Fをサポートし、日本でもSuicaやEdyなどの電子マネーをサポートするようになるのかはまだわからない。これまでのiPhoneにもNFCが搭載されてきたが、Apple Pay以外の用途には開放されてこなかったからだ。