“かわてらす”のイメージの原点は、夏の京都の風物詩として知られる“川床(かわどこ)”。川床とは、河川に突き出して設けた飲食のための高床で、京都の鴨川沿いに納涼床がずらりと並ぶ情景は実に壮観だ。

京都の鴨川沿いの川床は夏の風物詩!(写真:PIXTA)

“かわてらす”はこれら川床の東京版で、人々が集う川沿いの“テラス席”と、水辺でにぎわう人々の表情を楽しく“照らす”、太陽の光と水面に反射した光によって人々の顔を明るく“照らす”という意味を込めて名付けられたという。

“防災”だけでなく“にぎわい”にも力点

これまでは都民の安心安全を守る防災という面から防潮堤を整備し、河川を管理してきた東京都が、“新しい水辺整備”という観点で都民を再び水辺に呼び戻し、にぎわいを創出するという展開が興味深い。

この社会実験では、河川敷地の使用に係る規制緩和を受け、都が“かわてらす”の設置と維持管理、店舗営業を行う事業者の募集を行った。この官民協業の取り組みについて、東京都建設局 河川部の冨澤房雄さんと大田将大さんに話を聞いた。

「これまで河川敷地において民間の事業者による飲食店等の設置は不可能でした。そういった中、規制緩和のひとつとして、平成23年4月に河川敷地占用許可準則が改正され、民間の事業者も地元の協議が整えば河川敷地にテラスをせり出すことができるようになりました」(冨澤さん)。

テラス席がせり出しているのが「ボン花火」の“かわてらす”東京・台東区

2014年に日本橋川沿いの日本の食をテーマにした文化情報発信型飲食店「豊年萬幅(ほうねんまんぷく)」が、社会実験に参加。そして今年7月から隅田川沿いに、バルニバービによる食堂&呑み「ボン花火」、シスコが経営するフレンチレストラン「Nabeno-ism」が社会実験をスタートしている。

社会実験による、一時占用期限は2年間。その他、事業者による維持管理や安全性確保、地域貢献策、構造などの設置条件などが東京都建設局のホームページで事細かく設定されている。

地元の理解を得ることが“かわてらす”実現のキモ

そして条件面で最も重要となるのが、冨澤さんの言う“地元の協議が整えば”というポイント。募集条件の最初にも「建物および土地所有者、地域団体や隣接者等とかわてらす設置に関する十分な調整ができていること」「清掃や緑化などの周辺環境の向上等による地域貢献を行うこと」と書かれている。つまり、地元との折り合いをつけられるかどうかが“かわてらす”設置を占う最大のカギとなる。