MVNOを支援する「MVNE」も増加を後押しする一因に
そしてもう1つ、MVNOが増加している背景にあるのは、先に触れた通り二次以降のMVNO、つまりMVNOからネットワークを借りてサービスを提供しているMVNOが増えていることにある。実際、DMM.comの「DMMモバイル」やイオンの「イオンモバイル」、日本通信の個人向け事業を受けるとされているU-NEXTの「U-mobile」、そして今夏から秋にかけてサービスを提供する予定の「LINEモバイル」などは、キャリアから直接回線を借りている一次MVNOではなく、二次以降のMVNOであることを明らかにしている。
そしてこれらの企業がMVNOとしてサービス提供できるよう、支援しているのがMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)である。MVNEとは、MVNOとしてサービス提供できるようにするためキャリアからネットワークを借りてサービス設計し、サポート部分まで請け負ってくれる、MVNOを支援する事業者のことを指す。
MVNEは自社でもMVNOとしてサービスを提供しており、ネットワークのノウハウを持つISPが多く、代表的なところでは、DMMモバイルなどに回線提供しているインターネットイニシアティブ(IIJ)などが挙げられる。日本通信も、個人向けの市場から撤退した後は、このMVNE事業に集中し、MVNOを支援する事業を主体にしていくとしている。
MVNEの存在があることで、サービスのアイデアを持っていても、通信のノウハウがないためサービスを提供できない事業者がMVNOとして参入しやすくなり、市場拡大にもつながっているといえるだろう。例えば、ベンチャー企業であるエコノミカルの「ロケットモバイル」は、ソニーネットワークコミュニケーションズがMVNEとしてサポートすることで、アプリのダウンロードやアンケートへの回答などで獲得したポイントを通信費から割り引くという、ユニークなサービスを実現している。
総務省の措置によって端末実質0円販売が事実上禁止したことで、MVNOの利用者は増加していることから、今後もMVNOに参入する企業は増え、市場も拡大が続くと考えられる。だが一方で、先行してMVNOを展開している国の多くは、移動体通信市場におけるMVNOのシェアが15%前後で推移しており、日本も将来的に、MVNOはそのくらいのシェアに落ち着くのではないかと見られている。
それだけに近い将来には、劇的に増加したMVNO同士の競争が一層激しいものとなり、かつてのISPのように多くの事業者が合併・撤退していく可能性が大いに考えられる。それゆえ今後は単にMVNOを拡大するだけでなく、実際に契約するユーザーに対し、いかに不利益を生じさせないかという仕組み作りも、同時に求められることになるだろう。