AppleがIntelファウンドリを採用する目はあるのか
Intelは、AppleがMacをIntelのCPUベースに切り替えた2006年以降、Appleには優先的にチップを供給するなど、密接な関係を結んできた。AppleがApple Aシリーズを自社設計するようになってからはAシリーズの受注を目指して交渉してきたことは何度も報道されており、今回ARMの製造に踏み切った背景にも、安定して大量の受注が見込めるAシリーズの製造が念頭にあったことは想像に難くない。iPhone向けに安定して製造キャパシティを割り振る見返りとして、Macに引き続きx86プロセッサの継続採用を期待することもできるだろう(Macは利益率の高いi5~i7シリーズを採用している)。
Appleとしても、過去にSoCの製造不足で製品供給が制限されてしまった例が何度かあるだけに、Intelの製造キャパシティの高さは魅力的に映るだろう。一社に製造を集中することによるデメリットもあるが、Intelとの関係の深さや製造キャパシティの高さはそれを相殺すると考えても不思議ではない。従って、AppleがIntelを採用する可能性は、かなり高いと筆者は予想する。
Appleは来月にも登場すると噂されている次期iPhone向けに、新型SoC「Apple A10」を導入する見込みだ。A10はTSMCが製造を担当し、製造プロセスは14~16nmでInFOパッケージを採用すると言われている。IntelがもしAppleから受注できたとしても、2017年以降、世代としては「A11(仮称)」以降ということになる。
もしApple A11がIntel製になった場合、10nm Fin-FETプロセスを採用し、FOWLP技術で製造されるのはほぼ確定だろう。Aシリーズは2世代おきに大きく改良されることから、A10のスペックはA9に比べてあまり大きく進化しないという推測もあり、A11はプロセスの刷新も含めて大幅な改良が施される可能性が高い。たとえば現行のA9はデュアルコアだが、A11ではトリプル/クアッドコア化なども視野に入るだろう。Intelの売り込み次第ではあるが、Intelが推進する無接点充電技術「Rezence」などもiPhoneが採用してくるかもしれない。
また、通信部分を司る「ベースバンドプロセッサ」(LTEモデム)でもIntelの出番がある。現在iPhoneは米Qualcommのものを採用しているが、次期iPhoneでは独Infineonを買収したIntel製のベースバンドプロセッサも併用するという噂がある(そもそもiPhone 4以前はInfineon製をを採用していた)。現在はSoCとベースバンドプロセッサが別パーツとして実装されているが、IntelがSoCの製造も担当するようになれば、ベースバンドプロセッサもSoCに内蔵して1チップ構成にできる。これは実装面積の削減や、コスト面からも魅力的だ。
筆者のような古いAppleファンからすると、Apple自身が出資してスタートしたARMアーキテクチャを、かつてNewton向けにStrongARMを供給していたIntelが再び採用したというのはなかなか感慨深い話題だ。今やMacにもプロセッサを供給する間柄だけに、iPhone向けのプロセッサでも協業することで、ほかにはないユニークな影響が得られることを期待したい。