"天空の城"竹田城の存在が広く知られるようになり、"雲海ビュー"に対するニーズがぐんと高まっている。とは言え、雲海を楽しむには早朝登山が必須になるなど、ハードルが高いところが多い。そんな中、北海道随一の雲海ビューはほぼ徒歩なしで楽しめると言う。それも雲海+αな楽しみ方もいろいろとのこと。聞いているだけでも、何だかワクワクしてくるではないか!

大自然だからこそ生み出せる風景がここにある

トマムで楽しめる雲海は3種類

北海道随一の雲海が楽しめるのは、北海道のほぼ中心部に位置するトマム(勇払郡占冠村: ゆうふつぐんしむかっぷむら)にある「雲海テラス」。ここは星野リゾートが展開している滞在型リゾート「星野リゾート トマム」内の一施設だが、エリア内のホテル「ザ・タワー」「リゾナーレトマム」宿泊者に限らず、ビジターでも利用できる。星野リゾート トマムへは新千歳空港から車で約100分、公共交通機関を利用するなら、特急のみ停車するJRトマム駅から無料送迎バスで5~10分となる。

「雲海テラス」は滞在型リゾート「星野リゾート トマム」の中にある

道内には他にも雲海を楽しめるスポットがあるが、その中でもトマムは地理的な条件もあって、平均して雲海発生確率が30%と高い確率となっている。そして、この雲海テラスで楽しめる雲海は3種類ある。ひとつは「太平洋産雲海」で、北海道沖で発生した雲が十勝平野を覆い、日高山脈を越えて発生する雲海だ。ボリュームのある雲が一面に広がり、ぴょこっと飛び出た山が島に見える、まさに雲海という言葉からイメージされる風景が広がる。

筆者が出会えたのは「太平洋産雲海」

もうひとつは、空気中に溶け込んでいた水蒸気が冷やされることによって発生する「トマム産雲海」で、冒頭の竹田城の雲海と同じ原理である。発生率は太平洋産雲海に同程度だが、比較的低い位置に雲が広がるのが特徴だ。最後のひとつは他に比べて発生率が低い「悪天候型雲海」で、その名の通り天気が悪い時に発生する。周囲が全て雲に覆われるのだが、ふとした瞬間に切れ目が生じ、上下に雲が広がるという幻想的な風景が楽しめる。

「トマム産雲海」は低いところに雲が広がる

「悪天候型雲海」は雲が切れる瞬間に絶景が待っている

13分の空中散歩

雲海は春~秋に見られる可能性が高く、この雲海テラスも5月中旬~10月中旬までの営業となる(2016年は5月14日~10月17日)。さらに、雲海が発生する時間もさまざまで、発生した場合、天候に左右されるが大体7時までのことが多いとのこと。雲海テラスは4時~8時にかけて営業しているため、前日は早めに就寝し、万全の体勢で挑みたい。

雲海テラス山麓駅舎に到着したのは3時45分。それでこの混み様だ

雲海テラスはトマム山(標高1,239m)内の標高1,088mのところに設けられており、ゴンドラ(往復料金: 大人1,900円、小学生1,200円、ペットの犬500円)で一気に標高591mから標高1,088mへと上る。この13分のゴンドラタイムも魅力的なひと時だ。トマムを一望できる景観はもちろんだが、雲海発生中ともなると、迫ってくる雲・雲の中・雲の上で異なる風景を体験できる。ただし、日の出を見ようとするとあたり一面はまだ薄暗く、足元に広がる牧場エリアの牛たちもぐっすり夢の中だ。

地上とうって変わり、雲の上はこの明るさ

どこを切り取っても絵になる雲海ビュー

北海道の夏はカラッと涼しいが、早朝ともなるとやはり寒い。雲海テラスではウォーマーを無料で貸してくれるが、数に限りがあるので防寒対策もしておきたい。ウォーマーをまとってテラスに出てみるとこの風景。寝ぼけまなこも一気に覚める。筆者が訪れた7月24日は、現地スタッフいわく「今期ベストの雲海」とのこと。なるほど、"私も持っている"ことを実感した。

2016年7月24日現在、今期ベストの雲海と出会う

じわりじわりとうねりをあげるその様子は、"雲海"という言葉がよく似合う。日の出前の淡い赤を放った空はきれいなグラデーションを描き、今日の始まりを温かく迎え入れているようだ。ゴンドラで上ってきた人たちがひとり、またひとりとはしゃぐ声がテラスに響く。

ゴンドラで次々と人が上ってくるが、テラスは港デッキや灯台デッキに加え、クラウドウォーク、スカイウェッジとさまざまな展望スポットがあるのでご安心を。また、元気があればテラスからトマム山の頂上まで約40分の登山もできるが、道中は本格的なルートになっているので、登山ができる装備をしてから臨みたい。

ゴンドラと雲海

雲海を見下ろしながらの散歩

クラウドウォークは2015年に登場。空中散歩が楽しめる。ふと見上げれば月

朝日が昇るぞ

もっと昇るぞ

昇ったぞ

ここまでくると、山が雲のお風呂につかっているようにも見えてくる

トマム山登山も楽しめる

また、テラスでは誰でもその場で参加できる無料のヨガを実施している。1回15分程度で、ヨガ未経験者にもオススメだ。雲海を望みながらゆっくり身体を整えると、きっと気持ちのいい朝が始まるだろう。また、雲海発生のメカニズムや今日の雲海の特徴等を分かりやすく教えてくれる、10分程度の無料の雲海ガイドも開催。「なんで雲海は夏季限定なの? 」「雲と霧って何が違う? 」等と素朴な疑問にも答えてくれる。

朝日を浴びながら、ヨガで身体を目覚めさせる

雲海ガイドでは雲と霧の違いも教えてくれる

雲海をいろんな場所から楽しんでいて思ったことのひとつが、「この雲海、おいしそうだな」ということ。実際、そう思ったのは筆者だけではないよう。続いては、雲海テラスで楽しめる、目にもおいしいドリンクたちを紹介しよう。