「さすがにこれは分かるのではないでしょうか」と言った記者の問いかけに、同社で広報業務などを担当している田中雅子さん(48)は、「私たちもびっくりしましたが、本当にこういったところから知らないという方はいるのです」と話した。
共働き家庭のユーザーが多い同社は、必然的にそういった家庭の家事をどうやって支援できるかという発想になるのだという。同社が調べた専業主婦家庭と共働き家庭の家事の分担率を比較したところ家事の分担率はほぼ同じであることが分かっている。「パパ側が変わらないと、ママが楽にならない。そういうことを思う男性社員も多い」と田中さん。
同社の男性社員はどうして、そのような発想の人間が多いのだろうか。田中さんによると、「小さい子どもがいるパパがたくさん働いていますし、ベンチャー企業だからこその柔軟性を持っていて、昔の考え方にとらわれず、働き方をよくしようとか、ライフスタイルを変えていこうという思いをもっている人が多い」のだという。
こう分析する田中さんだが、彼女こそまさにワーキングマザー。商社、通信業界などでの勤務を経て、前職のITベンチャーでは、役員にまで上り詰めた。その間に第一子を出産したが、育児時短が終わった後、個別に企業と交渉し、独自の時短を適用してもらい、働いていたという。ただ、子どもの小学校進学を前に、根本的に働き方を見直したいと思い、前職を辞職したのだという。「仕事を持ち帰ることもありましたし、子どもの態度のちょっとした変化もありました。習い事も土日しかさせてあげられないな、などと考えた結果です」。
料金改定で会員数が2年で4.5倍に
前職を辞めたのち、2013年にインターネットで派遣の仕事などを探していたところ、主婦に特化した人材サービスを展開しているビースタイルのサイトにたどり着いた。役員の経歴を持つ田中さんは、キャリアを積んでいた女性を対象としたサービス「時短エグゼ」に登録。そこでリネットに出会ったのだという。任された仕事は、データ分析をして料金を最適化する作業。その年の10月に改定すべく3月から12月まで、週3回午前10時から午後4時までの勤務で派遣契約を結んだ。
田中さんが改定した料金では、例えば240円だったワイシャツを150円に値下げ(※現在の価格とは異なる)。これが功を奏し、同社は、2013年から2015年までの2年間で会員数が約4.5倍になった。
田中さんにおいては翌1月、時短勤務のままに直接雇用に切り替わり、2016年1月には時短勤務の正社員になった。同社は、彼女を正社員にするにあたって、ある決まりを作った。
それは、いたってシンプルなものだ。