「糖質オフ」などがもてはやされている風潮を、メーカーはどのように見ているのか。セミナーの最後は、三井製糖 商品開発部の奥野雅浩氏なども含めたゲストでパネルディスカッションが行われた。

近年では肥満やメタボリックシンドロームなどのリスク要因として、糖質は「悪の対象」にされてきた。そこで奥野氏は「糖質のリスクばかりを見て排除してしまうのではなく、パラチノースで糖質のポジティブな面を積極利用できる『糖質スローオン』を提案したい」と話す。

パラチノースとは、酵素の働きによって砂糖から作ることができる糖だ。自然界にもはちみつなどに微量に含まれており、甘味は砂糖の半分だが、砂糖の約1/5のスピードで吸収され、「ゆっくり(スローに)働きかける糖」であることが大きな特徴だ。さらに、パラチノースと一緒に摂取した糖も合わせてスローオンにしてくれるため、砂糖と混ぜて使っても効果が期待できるとのこと。

血糖値が急上昇しにくい糖として、近年はお菓子やドリンクなどの商品に使われ始めているほか、病院食の砂糖をパラチノースが混ざったものに全面的に切り替えるなどの導入事例もある。パラチノースは消化吸収がゆっくりであることで満腹感が維持できるだけでなく、集中力や記憶力が持続でき、肥満者の内臓脂肪を減少させることなども紹介された。

ゆっくりと吸収され、健常者も健康を意識する人も同様に摂ることができるパラチノースを紹介する三井製糖の奥野雅浩氏(左)

そのほか、糖質制限のような「不要論」の危険性について、佐藤氏は「栄養学では、悪者だったものが良いものになったり、その逆になってしまったりすることがある。例えば、1970年代には食物繊維は何の栄養価値もなく不要とされていたが、今は積極的に摂取したいものに変わった」と過去の事例を踏まえて警鐘を鳴らす。糖質も排除してしまうのではなく、これまでの食経験に基づいて日々の食事の中で調整していくことが重要と議論された。

また、市場への提案としてはやはり「わかりやすさ」も求められると秋谷氏は話す。「健康食品でいえば、特保に対する市場の信頼は大きいが、機能性食品は浸透していない。もっとわかりやすく見せていくことが大切だ」。今後、市場にどのように提案していくかが今後の大きな課題となる。

「糖質」をめぐる市場の考え方は、今、大きく変わりつつある。自身の食生活を振り返り、糖質の摂り方を見直してみてはいかがだろうか。