血糖値を上げにくいフルーツ
ダイエットや糖尿病などの生活習慣病の予防として、「食後血糖値のコントロール」がポイントだといわれることも多い。西山教授はこれを踏まえ、キウイフルーツが血糖値を上げにくい食品であることを指摘する。
食品に含まれる炭水化物は、小腸でグルコース(ブドウ糖)に分解され、血液中に吸収される。食後に血糖値が上昇すると、すい臓からインスリンが分泌され、通常、食後2時間程度で血糖値は元のレベルまで低下。しかし、インスリンの量が少なかったり、分泌されるタイミングが遅かったりすると、食後血糖値がすぐ下がらず、食後高血糖をきたすことがあるという。この食後高血糖は動脈硬化を進行させ、心血管疾患や脳卒中のリスクを高めるとされている。
西山教授は「食後高血糖を防ぐためには、血糖値を上げにくい食品を選ぶことが有用とされています」と話す。
血糖値の上昇度を示す1つの指標とされているのが、「GI(glycemic index: グリセミック・インデックス)」だ。その値が低いほど血糖値が上がりにくい食品であることを表しており、値が70以上は「高GI食品」、56~69は「中GI食品」、55以下は「低GI食品」にカテゴリーされる。そして、キウイフルーツは低GIに該当する。
「食品1食あたりの血糖値上昇への影響を比較した研究でも、キウイフルーツ100gは、パン30gや白米150g、バナナ120gなどと比べて、血糖値を上げにくい食品であることが明らかになっています」と西山教授。
これを裏づける研究に、ビスケット(炭水化物)のみを食べた場合と、ビスケットとキウイフルーツを一緒に食べた場合とで、食後血糖値の変化を調べたものがある。結果として、どちらも同じ量の炭水化物を摂取したにもかかわらず、キウイフルーツを一緒に食べたほうが血糖値の上昇が緩やかになったことが示された。
胃に優しく、腸内環境も健やかに
最後に西山教授は、キウイフルーツの消化器系の働きについて語った。
タンパク質を分解する酵素の一種である「アクチニジン」は、グリーンの果肉には100gあたり約300mg含まれているが、ゴールドにはほとんど含まれていない。この酵素の働きによるキウイフルーツの消化促進効果を示す研究として、ヒトの消化器系の環境を模倣した試験管内実験(in vitro)と、ラットや成長期のブタを使った動物実験(in vivo)が発表されている。
試験管内の実験では、消化酵素である「ペプシン」を含む人工胃液にタンパク質を入れ、pH2の酸性条件で30分消化したのち、pHを8に変え、パンクレアチン(消化酵素)を添加して人工腸液の組成とし、さらに120分間の消化を行うという方法で実施した。その結果、人工胃液にグリーン抽出物を添加した場合、カゼイン(乳タンパク質)や食肉タンパク質、大豆タンパク質などのタンパク質において、消化促進効果が観察された。
一方、動物実験では、タンパク質のエサと一緒にキウイフルーツを与えた場合の消化に対する影響を検証。その結果、アクチニジンを豊富に含むグリーンを与えた場合では、アクチニジンをほとんど含まないゴールドを与えた場合に比べて、消化促進効果が認められた。
国際シンポジウムでは、ヒトを対象にした臨床試験結果の速報も発表された。それによると、健康な成人男性を対象に臨床試験を行ったところ、赤身ステーキと一緒にグリーンを食べたグループでは、膨満感など胃における不快な症状が軽減したという。
「これら複数の研究結果から、グリーンにはタンパク質の消化促進作用があると考えられます」と西山教授。
さらに別の研究において、グリーンおよびゴールドは腸内フローラ(腸内細菌叢)の改善効果をもつことが示唆され、グリーンは便秘改善効果を示したことを挙げている。
なお同セミナーでは、キウイフルーツを使ったアレンジメニューもふるまわれた。ハーフカットで手軽に取り入れるのもよいが、パスタや生春巻き、スイーツに添えるなどアレンジを加えてみると、より飽きずに摂取することができるだろう。
手軽に食べられて、栄養バランスにも優れたキウイフルーツ。今回、その栄養機能だけでなく、低GI食品としての評価や、腸内環境を整える役割なども認められつつあることがわかった。まずは健康のために、そしてダイエット・美容のためにも、1日2個の"キウイフルーツ生活"を始めてみてはいかがだろうか。