Android Oneを採用しても端末は安くならない
そしてもう1つの理由はブランディングだ。実際、ソフトバンクの執行役員で、ワイモバイル事業推進本部本部長である寺尾洋幸氏は、「Android OneをiPhoneに並ぶ主力ブランドに育てていきたい」と話しており、Android Oneをブランドとしても活用していく考えを示している。
実はソフトバンク、ひいてはワイモバイルとグーグルの関係は意外と深い。2013年にワイモバイルの前身の1つであるイー・モバイル(イー・アクセス)が、グーグルの「Nexus 5」を販売し、これがヒットして以降、歴代のNexusシリーズのスマートフォンをワイモバイルやソフトバンクで販売するなど、協力関係にある。
そうしたことからソフトバンクとグーグルとの関係の強さを打ち出すべく、あえてAndroid Oneを前面に出す戦略に出たといえよう。Android Oneのブランドを前面に押し出すことで、ソフトバンクとグーグルという大きな企業が関わっている安心感を打ち出すのが大きな狙いとなっているわけだ。
一方で、これまで新興国向けであったAndroid Oneを採用したからといって、端末価格が劇的に安くなるわけではない。507SHはボディデザインやスペックを見る限り、auの「AQUOS U」をベースに開発されたミドルクラスの端末となるが、価格は一括で51,840円、MNPで12,960円。総務省の施策の影響で実質0円での販売ができないとはいえ、日本仕様を取り入れていることなどもあってか、劇的に安いわけではないことが分かる。
それだけに、最近増えている海外メーカーのSIMフリースマートフォンなどと比べると、価格面での競争力はあまり高いとはいえない。それでもなお、ワイモバイルがAndroid Oneを採用したのには、価格を重視することよりも、防水やワンセグなど馴染みのある機能を備え、なおかつOSのアップデートにも対応する、安心感をユーザーに与える狙いが大きかったといえるだろう。
MVNOのサービスやSIMフリースマートフォンは、価格は安いもののサポート面などが弱く、安心感の面ではいまいちだという声も多い。また先に触れた通り、ワイモバイルの人気には、適度な価格で安心感のあるサービスやサポートを提供していることが大きく影響している。それだけにワイモバイルはAndroid Oneの導入で安心感を追求し、MVNO同士の価格競争とは一線を画したい考えがあるといえそうだ。