AUDEZE(オーデジー)は、平面駆動型ヘッドホンの多彩なラインナップを展開するアメリカのブランド。今回取り上げる「SINE」は、AUDEZEにとって初めてポータブルユースを想定した平面駆動型オンイヤーヘッドホンだ。一般的なダイナミックヘッドホンの振動板がドーム形状であるのに対して、平面駆動型はその名の通りフラットな形の振動板を採用していることが特徴。磁界を生み出すコイルを板状の振動板に埋め込み、強い磁石と電流の力によってユニットを動かして音を鳴らすという仕組みになっている。
ドライバーの開発、製造に高度な技術が必要とされることから、ドーム型振動板のヘッドホンに比べて一般的ではないが、ダイナミック型よりも自然で滑らさ、かつ繊細なニュアンスの表現力に富んでいるとして、最近注目を集めている。平面型振動板の課題は、能率が低くなかなか鳴らしにくい所であるといわれているが、各メーカーはそれを克服すべく奮闘し、ユニークな製品を次々と投入している。
SINEに搭載している振動板はサイズが80×70mm。薄く設計することで、正確さと自然で滑らかなサウンドを追求した。ハウジング内の空気の流れをコントロールし、よりクリアで抜けの良い音を実現する「Fazorサウンドウェーブガイド」や、高級ネオジウムマグネットの力で磁束密度を高めて低域再生を強化する「Fluxor」磁気回路を搭載。平面駆動型の特徴である歪みの少なさをより一層際立たせるため、平面な振動板全体に均一な磁場をつくり出すための「Uniforceデザイン」などが主な特徴だ。
SINEのバリエーションとして、独自のDSPにDAC、デジタルアンプを内蔵するLightningコネクター仕様のケーブル「CIPHER Lightning Cable」を同梱するパッケージも発売されている。
現在Lightning直結タイプのヘッドホンやイヤホンが脚光を浴びている理由は、アップルの次期iPhoneではイヤホンジャックが省かれて、Lightning端子に一本化されるのではないかと噂されているからだ。最近ではBluetoothワイヤレス接続が主流になるのではという見解もあるが、いずれにせよイヤホンジャックがなくなった場合、我々ユーザーはLightning直結という手段を余儀なくされるかもしれないのだ。
CIPHER Lightning Cableでは、ヘッドホンで音を鳴らすために内部でどのような処理を行っているのだろうか。簡単に仕組みを整理してみよう。iPhoneなどiOS機器のLightning端子から出力された音楽信号は、リモコンに内蔵されている「Lightning Audio Module」(LAM)と呼ばれるICチップに送られた後、DAC回路を経てアンプで信号を増幅し、ドライバーを駆動する。
搭載されているDACは48kHz/24bitまでのハイレゾ音源に対応。このLAMを組み込むとハイレゾ対応の上限が48kHzまでとされる条件があるようだが、代わりにMFi認を取得できるので、iPhoneにつないで音楽再生をリモコンで操作したり、マイクを使ってハンズフリー通話が可能になる。以前にAUDEZEのCEOにインタビューした際には、「いずれアップルが上限48kHzのルールを変更して192kHz等まで広がれば、CIPHERのソフトウェアアップデートによりすぐに対応可能だ」と語っていた。