国レベルでの「常設会議」は今までに2回行われており、ユネスコの諮問機関イコモスから特に指摘を受けているインドチャンディガールの管理計画や、保全計画についての話し合いを進めている。また自治体レベルでも「ル・コルビュジエ建築遺産自治体協議会」を設立し、日本からは東京都と台東区が加盟している。言語も違えば、宗教、文化的背景、経済規模も違う国同士での話し合いだ。折りしも委員会が開催されたトルコでは期間中にはクーデターが起きた。それだけではない、宗教や民族の対立を背景にして血が流れる出来事が連日のように起きている。国を越えて1つの文化遺産を守り続けていくことが簡単ではないことは容易に想像できるだろう。
第2次世界大戦の教訓から「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」と前文に書かれたユネスコ憲章。そのもとに作られた世界遺産。この1つの遺産を通じて実現する国家間の文化、宗教、民族などを超えた協力は、異なるものを理解する1つのヒントになるだろう。イコモスの勧告に関する報告を2017年12月1日までに世界遺産センターに提出することが決まっているが、コンセンサスをどうやってとっていくか、その過程はおおいに注目の価値がある。
どんな観光効果があるのか期待される上野
国立西洋美術館においては、イコモスの勧告後徐々に来館者数をのばしてきたが、登録翌日の18日前週比3倍の約7000人が、西洋美術館を訪れた。7カ国にまたがる遺産で、世界的な建築家ル・コルビュジエの作品の1つとの認識が広がれば、関係国をはじめインバウンド効果も期待したいというもの。7月28日から1カ月間、国立西洋美術館をはじめ上野に数多くある歴史的近代建築物をめぐるツアーを開催するなど、登録を機に地元は盛り上がりをみせている。