自動運転でいち早く実績を作りたいDeNA
だが今回のコンソーシアムに参加する企業の顔ぶれを見ると、いずれも自動車関連企業ではなく、IT関連大手のDeNAと、携帯電話大手のNTTドコモである。自動車と直接関係のない両社がコンソーシアムに参加する企業の狙いはどこにあるのだろうか。
DeNAが狙っているところは、やはり自動運転の実績作りであろう。DeNAは元々コマースやゲーム事業に強みを持つが、これら分野での競争は厳しさを増している。そうしたことから最近ではライフスタイルやヘルスケアの事業に進出するなど、強みとするIT技術を活用した多角化を進めつつある。そうした多角化の1つとして、DeNAが推し進めているのが自動車に関連事業である。
これまでもカーシェアサービスの「Anyca」を展開したり、駐車場のシェアサービスを展開する「akippa」に出資したりするなどの取り組みを進めているが、同社が最も力を入れているのは自動運転によるサービスの提供だ。実際DeNAは昨年5月、自動運転技術を持つベンチャー企業のZMPと共同で、「ロボットタクシー」を設立することを発表。自動運転によるタクシー事業の実現に向けた取り組みを進めており、今年3月には神奈川県藤沢市で実証実験も実施している。だがロボットタクシーは公道を走行してはじめて成立する事業でもあるため、完全無人の自動運転による事業実現にはまだ時間がかかるというのが正直な所だ。
そこで、より現実的な自動運転によるサービス提供に向け、新たに開始したのがロボットシャトル事業である。これはコンソーシアム設立の前日に発表された新しい事業で、イージーマイル社のEZ-10を用い、公道ではなく私有地を対象として、完全無人自動運転によるシャトルバスシステムを提供するというものだ。
ロボットシャトルはあくまで私有地をターゲットにしていることから、法律面の問題に関して大きな影響を受けることなく、サービスを提供しやすい点が大きな特徴となっている。実際DeNAは、やはり国家戦略特区である千葉市にある「イオンモール幕張新都心」に隣接する豊砂公園で、8月より試験的にロボットシャトルによるサービスを提供することを既に発表している。
だが一方で、ロボットシャトルのサービスはまだ始まったばかりであり、私有地と私有地の間に公道を挟んだ場合の対処など、さまざまな課題をクリアする必要がある。そうした法整備の問題も含め、ロボットシャトルのシステムをより安全かつ確実に運用できるようにして、普及を進めるためにも、国家戦略特区であり、行政側が協力的な姿勢を示している福岡での実証実験に参加したといえそうだ。