近頃注目を集める自動運転だが、7月8日福岡市と九州大学、そしてNTTドコモとディー・エヌ・エー(以下、DeNA)がコンソーシアムを結成し、九州大学構内で自動運転の実証実験を開始することを発表した。自動運転のコンソーシアムに参加するIT関連企業の狙いはどこにあるのだろうか。
九州大学構内で自動運転の実証実験を実施
かつては夢物語とも言われた自動車の自動運転。だがセンサー技術の急速な向上などにより、自動運転は現実のものとなりつつある。既にグーグルが自動運転の実用に向け自動運転車の開発を進めているほか、テスラモータズも自動運転機能「オートパイロット」を自社の車に搭載。ハンドルから完全に手を放すことはできないなど人間が乗車している必要はあるものの、既に自動運転は現実のものとなっている。
だが一方で、自動運転に関しては技術が進化する一方、法整備の面では準備が整っていない。特に完全無人による自動運転の実現には、車両を制御するドライバーの乗車を前提とするジュネーブ条約の批准などの問題もあり、非常に多くのハードルが存在することは事実だ。そうしたことから現在のところは、あくまでドライバーが乗車し、何らかの制御できる状態でのみ、自動運転サービスを提供している。
しかしながらそれでも、無人での自動運転に大きな可能性を抱き、自動運転サービス提供の実現に向け力を入れる取り組みは多く見られるようになってきた。中でも国内において非常に大きな動きといえるのが、7月8日に福岡市が、九州大学とNTTドコモ、そしてDeNAと共同で「スマートモビリティ推進コンソーシアム」を結成、九州大学の伊都キャンパスで自動運転バスのサービス実現を目指すというものだ。
このコンソーシアムでは、DeNAが提供する、仏企業のイージーマイル社製の自動運転バス「EZ-10」を用いた「ロボットシャトル」の基盤を活用。そこにNTTドコモが持っているネットワーク技術や人工知能などの技術を用いることで、より安全で確実な自動運転の実現を目指すとしている。なお今回の実証実験は、早期に商用サービスの提供実現を目指すため、完全無人の自動運転ではなく、運転席はないが緊急対応のオペレーターが乗車する形になるとのことだ。
実証実験の場となる九州大学の伊都キャンパスは、あくまで大学の敷地ではあるものの、275ヘクタールという広大な敷地を有しているほか、キャンパス内には人だけでなくバスや自動車などが走っており、しかも坂や信号などがあるなど、公道に近い環境であるため実証実験の場としては非常に適しているという。また大学内ということもあって、ITの知識を持つ若い層が多いことから、自動運転に対する理解も得やすいことも、大きなポイントとなっているようだ。
そしてもう1つ、このコンソーシアムで大きな役割を果たすのが福岡市だ。福岡市は国家戦略特区に指定されていることから、自動運転に関する法律上の問題に対しても柔軟な対応が取りやすい。しかも今回のコンソーシアム結成には、福岡市長の高島宗一郎氏が大きく関わっていることから、自治体のバックアップが得られるというのも大きなメリットとなっている。