プロパイロットは安全技術
先々も考えると、期待が膨らむ自動運転技術だが、安全性の問題も指摘されている。それがクローズアップされるきっかけとなったのが、今年5月、米国において発生した事故だ。米テスラの「モデルS」のドライバーが自動運転機能を使用した走行中に側方から進入したトレーラーに突入し死亡した。モデルSの自動運転技術もレベル2に相当するもので、完全自動運転ではない。事故の直接的原因がシステムなのか、ドライバーなのかは不明のままだ。
そうした事故を踏まえてか、新型セレナの発表会で何度も登場したのが「安心・安全」という言葉だった。日産は交通事故の9割が人為的なミスによるものとし、プロパイロットを交通事故を減らすための安心・安全の技術だと強調する。確かに米国での死亡事故はひとつの事象に過ぎず、事故の総数は技術をもってして確実に減らせるのであろう。
「技術の日産」と標榜するように、プロパイロット搭載車種に、中核モデルのセレナを選んだのも、技術をもってして課題の解決が可能だという同社の自信の表れだろう。同社のプロパイロットにかける期待も高く、製品開発担当の坂本秀行副社長は「運転支援技術としては、世界的にエマージェンシーブレーキ機能が急激に普及しているが、それと同様に広まっていいく価値ある技術」とし、「普及すると思うし、普及させたい」(同氏)と熱を込める。販売価格についても、300万円を切る"戦略的な値段"として普及に力を入れていくようだ。
そうした思いに反して、米テスラ車の事故が自動運転技術への不安を増長させたといえる。事故件数としては1件だが、その1件の重みは自動運転技術がまだ黎明期にあるなかで非常に重い。こうした事故を消費者はどう捉えていくのか気になるところだ。その意味で、新型セレナの売れ行きは、日本国内における自動運転技術の普及を占うものとなり、重要な指標にもなりそうだ。